常闇の伴侶/老魔術師の昔語り②:かつての魔術師と吸血鬼
過去編なのでかつてのステータス。
若アリザルフさんは舐めプ(従者が【光源増幅】しか覚えてない緋色の魔術師徒弟1人+ゲルダさん)で全滅したので、ノワ様は黄昏の騎士で肩慣らし+ガッツリ従者連れて挑んでいます。


いいお胸様が描けたな……(自画自賛)
ノワ様も、今の女帝って感じではなく、昔はお嬢様(淑女)の皮を被っています。
多分その方が血を頂きやすかった感じなのでしょう。今はアリザルフお爺ちゃんと【血の契約】をしているのもあって、血に困る事が無いので素の堂々とした感じに。
デルガさんとデヴィオさんのお姿イメージは、書籍版『常闇の伴侶』の挿絵を参照しています。めーちゃくちゃいいイラスト多いので是非! 個人的には『守り人シリーズ』を思い出しました。バルサさんとタンダさん大好き。
という訳で本編始まります!
基本はアリザルフお爺ちゃん目線で進みます。
同時に(はやってないんですが)1人プレイしたという感じなので、中間最終はそれぞれ戦っています。
そして過去編なので、シナリオの特別な従者ゲルダさん、ヴィドさんではなく、めちゃめちゃよく似た別人、という事にしています。先祖か遠い親戚とかかもしんない。
とは言え、ベースはほぼシナリオ通りです。
では、ここからはアリザルフお爺ちゃんに語ってもらう事にしましょう。
背景/かつての魔術師
儂の生まれは混沌都市ゴーブ。アルビノオークの王に洗脳された緋色の魔術師の中に生まれた。物心ついた頃には違和感があって、少年と言って差し支えない頃に自力で洗脳を解いた。その時に感じたのは……強い怒り。憤り。
勝手にゴーブを守る事を運命づけられた事に、激しい拒絶があった。それこそ、燃え盛る火炎のような。
(許さない。……俺がいずれ、ゴーブを統治してやる)
ゴーブを脅かす混沌どもは炎に弱い。炎の魔術を得意とする我ら緋色の魔術師が、ゴーブを統治した方が、絶対に人々に安らかな暮らしを与えてやれる……と、そんな野望を抱いた。
この時点で、ゴーブにまだ執着があったから、洗脳は完全には解けていなかったのかもしれないな。
とは言え、自らの力で自我を取り戻し、仲間の洗脳を少しずつ解いていった儂は、その内に神童やら天才やらと言われて祀り上げられた。その自覚はあったし、自惚れておった。
洗脳を解いた後、ぼんやりして生きる意味を失ってしまった仲間たちを引き連れ、山野を放浪しながら術を磨いた。いつかはゴーブを統治するのだと。
その内に、拠点となる廃墟の塔を見つけ、そこに住まう事にした。まだ幼い弟子は多かったし、彼らを養い世話をするには安全な居場所が必要だったからだ。この理由であれば、清貧を貴ぶカタク様といえどもお許し頂けるであろう。
弟子の中では、儂に憧れが強く才に秀でたエルブジオンと、逆に殆ど才の芽が出なかったシャルナを可愛がった。二人は程良く喧嘩しては、儂の周りを騒がせてくれたものだ。
今思えば、あの時が一番忙しく、そして幸福な時間だったようにも思う。
しかし、当時の儂は術を磨く事、ゴーブをどうにか治める事しか考えておらなんだ。
そして、エルブジオンに塔の今後を任せ、儂はシャルナのみを連れて、蛮族都市フーウェイへと向かった。
ゴーブは頻繁に統治する者が変わる。それだけ、統治者は危うい均衡の元、ゴーブを治めている。恐らく、何の後ろ盾もなく襲撃を仕掛けても、〈混沌〉に対するように(致し方なく)一致団結して迎撃されるであろう。
で、あるならば、まだ御しやすいであろう「蛮族」の街を先に攻略しようと定めた。
木と毛皮、石などを生活基盤に暮らす者たちであれば、炎で御しやすいと判断しての事だ。
その判断の浅さ、傲慢さが、深い後悔を呼ぶ事も知らずにな……。
冒険の始まり/1回目の冒険
アリザルフとシャルナがフーウェイを訪れた時、フーウェイは夏至祭の準備の真っ只中だった。彼の想像以上に活気が溢れ、天幕がそこかしこに広げられたり、露天商や香具師たちが荷馬車や縁台に商品を広げていたり、食事や酒を出す屋台も出て賑わっている。
シャルナは物珍しそうにあちこちに目を向け、くいくいとアリザルフの緋色のローブの袖を引っ張った。
「師匠、師匠。犬が沢山いますよ」
「猟犬だろう。……あまりきょろきょろするな。甘く見られるぞ」
「はぁい……」
「……後で見聞を広めるのは良し」
「わぁい!」
シャルナはアリザルフや兄弟子たちと暮らした塔での生活しか知らない。何もかもが新鮮なのだろう。そう言うアリザルフも書物と人伝手の噂でのみフーウェイの情報を得ていただけで、実際に訪れて驚いた事は幾つもあった。思ったより、彼らなりのお洒落や身だしなみにも気を遣っていて、「蛮族」と表現するには少し認識を改めなければならないようにも思える。
(……とはいえ、だ)
街を囲う高い城壁は堅く燃えにくい〈トレント材〉であるものの、家々は氏族ごとに壁の一部を共有するように繋がっており、木材で建てられ、屋根には毛皮が使われている。火事に弱いことは充分窺えた。勿論、アリザルフの目的は侵略や掠奪ではないから、民を狙う事はしないが、それでも炎の脅威は充分通じるに違いない。
それでいて、フーウェイの戦士たちは屈強な体つきだ。生まれた性別がどちらであれ、〈男〉の生き方を選んだ者たちは、戦う事、強くある事を是としている。それが出来ない場合は〈女〉として街の中に残り、裁縫や炊事などの家事から、荷物の上げ下ろし、鍛冶なども行うのだという。要は、「適材適所」なのだ。その合理的な生き方は、アリザルフの目には悪く映らなかった。戦士となるべく生き様を定めた者たちは、兵士としても頼もしい限りだろう。彼らも、〈カオス平原〉からやってくる〈混沌〉の脅威に晒されており、〈混沌〉を倒すのを生業としている氏族もいるという。ゴーブに向かわせる戦力としては申し分ない。
(もしくは、話し合いで協力を仰いでやってもいい)
氏族の長が話の分かる人物であるといいが、と思いつつ、話を付けに行く。すると案外呆気なく長の家へと通された。族長の家は流石に他の家と連なってはおらず、大きい造りだったが、樫の木と石を組み合わせて作られた簡素な家屋は、案内が無ければ気付かず通り過ぎてしまったかもしれない。
(話が早くて助かるな。俺には時間が惜しい……)
未だ、洗脳が解けずにゴーブの者達に使役され、自らの意思と思い込みながら、ゴーブを守らされている同胞たちが大勢いるのだ。彼らの自由の為にも、一刻も早くフーウェイの戦力を整え、ゴーブに向かわねばならない。
しかし、筋骨逞しい白い肌に無造作に伸ばした長い黒髪のカリウキ氏族の族長から聞いた話は、《太古の森》の奥地で行われているらしいという、不思議な儀式の調査依頼であった。
「……馬鹿な、まるで御伽噺だ」
そう言い捨てたアリザルフに、族長は話は終わりだ、とばかりに片手を振って髪を靡かせながら奥へと引っ込んでしまう。
「あとは若いもんに聞くがええて」
族長の傍らに控えていた皺くちゃの老婆が加えて言い放つ。
皺の奥の眼光の鋭さは、アリザルフの訪問の目的すら見抜いているかのようだったが、特にそれ以上口を開く事は無かった。
(……ふん。この依頼を終えれば、多少は恩を売れるかもしれんな)
族長の話では、《太古の森》に住まう闇エルフたちが、天高く聳える大樹の前に集まり、花嫁装束を身に纏った少女たちを崇めていたらしい。森に迷った蛮族の狩人が、闇夜を切り裂く雷光の中で、その謎めいた儀式が執り行われているのを見たというのだ。
(そんな闇エルフの脅威を恐れる不安の声が出始めた……真偽不明の噂を調べたい所だが、祭前の忙しさでそんな余裕もない。が、放っておく事も出来にくい。冒険者風情であれば、使い捨ての駒として最適、という訳だな)
ゴーブ攻略に、冒険者を雇うのも良いかもしれない、と思いついたが、それにはやはり元手が必要だ。ここでフーウェイを代表する一つの氏族に実力をしっかりと示してやれば、交渉にも有利に働くだろう。どうやら報酬も破格のようだし、アリザルフはこの依頼を受けてやる事にした。
(一攫千金など、狙う予定は無かったが……)
緋色の魔術師は規律ある清貧な生活を良しとする。しかし、世俗の者達は、生きる上でお金や対価というものに縛られがちだ。道理で余所者の冒険者や、武装した賞金稼ぎや遺跡荒らしの類、素性の知れぬお尋ね者のような雰囲気の者などが多い訳だと知れた。
(ふん、自分の欲の為だけの輩と、俺は違う。……奴らに先を越される前に、さっさと……)
「師匠、師匠! このお兄さんが話があるそうですよ!」
アリザルフの思考は、シャルナの言葉に中断させられる。振り向けばシャルナが、長身痩躯で狼の毛皮を肩から掛け、捻じ曲がった杖を手にした青年に話しかけられていた。恐らく銀狼をトーテムとして祀る蛮族のまじない師だろう。青年は馴れ馴れしく、シャルナの手を取ってすらいる。アリザルフは渋面に深い溜息を吐いた。シャルナはどうも、危機感が少ないのだ。
「シャルナ、見知らぬ相手に話しかけられても無視しろと言っただろう」
「おいおい、そんな寂しい事言うなよ。お前たちがおばばの言ってたやつだろう?」
「おばば……族長の家にいた、あの老婆か」
アリザルフがそう尋ね返せば、正解、と軽妙に青年は頷いた。族長が〈男の中の男〉として武力を誇る者だとすれば、おばばは〈女の中の女〉として呪いに長けた者を指すのだろう。族長の右腕として、時に占星術で以て氏族の先行きを占うらしい。
「おばばが言ってたのさ。『緋色の魔術師、お前はそのままなら破滅する』ってな」
不吉な伝言をしてのけた青年は、デヴィオと名乗った。
「そんな事言われてたら、気になっちまうってもんよ。おばばの占いは当たるからな。俺か、もう一人を連れて行けば、『そのまま』じゃないから、避けられるかもしれないぜ」
「占いなど下らん。……が、協力者は連れていってやってもいい」
「そうそう。流石にアンタが強くたって、従者1人だけじ心許ないだろ」
「あたし、従者じゃなくて弟子ですよぉ」
「シャルナは戦力外だ。戦いは俺一人でも充分だからな」
「ひどい!」
「お前は【光源増幅】以外が使えるようになってから口答えするといい」
「はぁい」
「はは、良い師弟関係みたいだな」
そんな会話をしつつ、屋台の売り子の声かけをひらひらと手を振って躱しながら、デヴィオはある天幕の前までアリザルフたちを誘った。
焚火の前で、蛮族の女が切株に腰掛けている。色白が多いフーウェイの蛮族にしては珍しく褐色の肌を持ち、縮れた毛をドレッドヘアに編み込んでいる。鰐皮の胸当ての上から赤いマントを纏っており、目立つ事この上なかった。眼光鋭く、デヴィオを睨み上げる。
「何だデヴィオ、誰を連れて来た」
「俺より頼りになりそうな魔術師の師弟さ。生きて帰ってこなけりゃ金も名誉もあったもんじゃないぜ、デルガ」
デルガと呼ばれた女は、ふん、と鼻を鳴らして焚火に唾を吐いた。デヴィオに返事はせず、獲物を狙う鷹のような眼差しで油断なく周囲に気を配っている。なかなかの手練れだとアリザルフが感じていると目線がちらと合った。それだけで実力を測れたらしい。
「魔術師、お前の名は」
「アリザルフ。緋色の魔術師だ」
「あたしはシャルナって言います! 初めまして、デルガお姉さん! 色々教えてくださいな!」
「……ついてこようが、どちらでも構わん。私が〈男の中の男〉になる邪魔さえしなければな」
元気よく挨拶したシャルナは無視し、デルガは立ち上がる。どうやら、彼女のお眼鏡に適わぬ相手とは、言葉を交わしたくはないらしい。もしくは、馴れ合いを好まないか。アリザルフとしては、飄々とした笑顔で底知れぬデヴィオよりは、デルガの分かりやすさの方が清々しく感じる。彼女の懐から信じられないほど邪悪な形をした投げナイフが覗いたのを、アリザルフは見逃さなかった。アレを受けたら、〈混沌〉などでも怯むだろう。
「邪魔するつもりは俺にも此奴らにもないけどよ。たかが呼び名ひとつ、そんなにこだわることかね」
「戦いを拒んで〈女〉を選んだ腑抜けに言われたくはない」
「おおこわ。シャルナちゃん、これは見習っちゃダメだぜ?」
軽口を叩いたまじない師を、女戦士が視線で射殺せそうなほど睨みつける。話を振られたシャルナは、その確執に気付ける程、世間を知らなかった。
「分かりました! ところで、〈男の中の男〉って何ですか? デヴィオお兄さんはデヴィオお姉さんなんですか?」
「……シャルナ、ここに来る前に教えただろう」
アリザルフは溜息を吐きつつ、それでも物覚えの宜しくない弟子の為にもう一度軽く説明する。
フーウェイの民は成人するとき〈男〉か〈女〉の生き方、どちらかを選ぶのだ。生まれた性別がどうあれ、〈男〉は戦士として生きる。〈男の中の男〉と呼ばれ部族を率いていくのは最強の戦士。だが、これまで生まれた性別が女性である者が選ばれたという話は聞かれていない。
ここまでの話から、デヴィオは〈女〉を選び、デルガは〈男〉として生きているのだろう。デルガは今回の騒動を片付け、〈男の中の男〉の称号を得る為に探索に名乗りをあげているようだ。……どこか、必死と言うべきか、焦燥を感じる。まるで、そうでもしないと、居場所を得られないかのような。
一方、デヴィオはというと。
「俺の目的、話してなかったっけ? おばばの言いつけで、森に棲まう樹人たちに伝わる伝承を調べてくるように言われてんだ」
「樹人……〈トレント〉がいるんですね!」
「《太古の森》だからな。そりゃもう沢山。長生きのヤツが多いから、きっとこの件も何か知ってるだろうってさ」
「へぇ~。色んなお話聞けそうですね!」
「そうそう、という訳で、まずは樹人の集落を探すべきだろうな」
四人で《太古の森》へ向かいながら、アリザルフは冷静に、二人の〈男〉と〈女〉の同行者を観察する。自分でも戦う事も出来るが、基本的にはアリザルフは魔術師だ。で、あれば、戦士のデルガと協力する方がバランスも良いだろう、とは思っている。デルガが殆どだんまりなので、シャルナはデヴィオの方に先に懐いているようだが……〈女〉を選んだだけあって、彼は戦いには不慣れなようだ。それに……何となく、動きがぎこちない時がある。体のどこかに不自由さを隠しているような、若干の違和感。とは言え、日常生活に支障はないようだから、〈女〉として働くには問題無かったのだろう。
(その分、知恵はある、といったところだな)
実力は無いが知恵はある、愛弟子の一人エルブジオンをふと思い出す。後を頼んだ、と書き残し、塔を任せてきたが大丈夫だろうか。……魔術の才はイマイチだが、熱意と管理能力の高さを見込んでいるから、恐らく大丈夫だろうが。
「件の儀式とやらで目撃されたのはおそらく古代樹だ。それなら樹人に話を聞くのが一番さ」
「じゃあ樹人の集落に皆で向かえばいいんじゃないですか?」
「ところがな、彼らは〈歩く樹〉なんだな。《太古の森》の生育に合わせて彼らも移動する。日光が無いと駄目だからな、日当たり良好な開けた場所を好むんだ。幾つか目星はあるから、手分けして探すのが効率が良いって訳」
「なるほど~!」
興味深そうに頷くシャルナと、聞き分けのいい生徒を得たようなデヴィオ達の会話をつまらなさそうに聞き流していたデルガは、アリザルフに一瞥をくれた後、足を早めた。
「おい、デルガ。とは言えあまり離れすぎるなよ。何か見つけたら合図をくれ……気を付けろよ」
「言われなくても。お前こそ、せいぜい足手まといにならぬように用心するんだな」
デルガは冷たく言い放つと、ずんずん、鬱蒼と茂る森の木洩れ日の奥へと向かっていく。アリザルフも彼女の背を追った。シャルナはアリザルフの後についていきつつ、デヴィオを振り返る。
「ちぇっ、うるせえよ……っと、シャルナちゃんたちは、ちょっと先に行っててくれ。気になることを思い出してさ」
「大丈夫ですか?」
「ん、大丈夫さ。ここらならまだ森も浅いから。……どうも〈同胞〉の匂いがするんでね」
不安そうに首を傾げるシャルナに、デヴィオは笑顔で手を振って見送る。
彼女の小柄な姿が見えなくなるまで手を振り続けたデヴィオは、その手を下ろすと捻じ曲がった杖を両手で握り直し、ゆっくりと振り返った。
「……出てきな。そこにいるのは『見えなくても』分かってるぜ」
樹々の作る深い陰の中から、すっ……と何者かが現れる。
「あら。気配は消していたつもりだったのに。……嗚呼、貴方、面白いモノを『飼って』いるのね」
黒いドレスを纏った女性だ。白く透き通るような肌、帽子から黒いレースが掛かっており、未亡人のような風情。だが、ドレスの胸元は大きく開き、豊かな胸元を惜しげもなく晒している。淑女のような落ち着きと、娼婦のような妖艶さが同居している美女だった。
「飼うだなんて烏滸がましいな。身体をお貸ししている身だ」
「……獣神セリオン。血に飢えている点では似た者同士かしら?」
「よしてくれ。うちの神様はそこまで血気盛んじゃない。……〈吸血鬼〉が、この森に何の用だ」
〈吸血鬼〉。
闇神オスクリードの悪意によって、闇神の血を入れられて身体を変えられた一人の男から生まれた、闇夜の中でのみ暮らす【アンデッド】。
血を飲まなければ生きていけず、太陽の光を浴びると滅んでしまう。
弱点も多いが、銀製の武器しか攻撃が通らず、完全に倒しきる為には手順が必要だ。
デヴィオの目の前の美女は、そっと扇子で上品に隠しながらも、整った赤い唇に弧を描かせる。そこに尖った牙がちらりと見えて、デヴィオは確信する。
(……俺じゃ、一撃すら喰らわせられないな。配下も後ろに控えてやがる。おいおい、デルガにちょっかい出しながら、ちょっと《太古の森》で調べものするだけだと思ったのによ……それとも、噂は此奴の仕業なのか?)
デヴィオは焦りを押し隠しながら、杖を構えたままじりじりと一歩下がった。戦士としての感覚は確かなデルガや、冒険者としては一人前のアリザルフですら、気配を気付かせなかった相手だ。目の前の女吸血鬼も大層強い。そして背後の闇エルフが弓矢を構え、此方にピタリと狙いを定めているのを感じた。他に、ゴブリンが数名。デルガやアリザルフが応援に戻ってきてくれたとて、勝機は怪しい。
「散歩に来ましたのよ。〈還らずの森〉を歩くのは飽きてしまったから、こちらの森はどうかと思って。そしたら何だか楽しそうな事になっていますのね。……ワタクシも、手伝ってあげましょうか?」
嘘か誠か、女吸血鬼は笑みを絶やさない。無論、はいそうですかよろしくお願いします、などとは口が裂けても言うまい。
「見返りに血を寄越せってか」
「いいえ、貴方の血は美味しくなさそうだから要らないわ。ワタクシ、色んな味を楽しみたいの。強い相手ほどいい味がするし、ここには色んな生き物がいるでしょう。味わえるのを楽しみにしていたのよ」
美女の求めるモノが血でなければ、美食家の貴族とでも思えそうな台詞である。初めて出会う吸血鬼にすら弱者扱いをされて、腹が立たぬ訳でも無かったが、何とか会話は成立している。ここで機嫌を損ねては、先を行くデルガやアリザルフ、シャルナも危険が及ぶかもしれない、とデヴィオは自分を抑えた。
「……まぁ、アンタの舌に合うかどうかは知らんが、わんさかいるさ」
「とてもいいわね。……ねぇお前、案内なさい。〈狼〉を身に宿しているのが気に入ったわ。……そう言えば、先に行ったのはお仲間? あの子達も美味しそうだったわね?」
「……分かった、案内してやる。ただし、あいつらには手を出さないでくれ」
「交渉成立ね。話が分かる人間で助かったわ」
脅しだろうが、との文句は口の中で押し殺す。
今回の騒動の黒幕という雰囲気では無さそうだが、強い相手の血を飲みたい、だけで大陸中央にある〈還らずの森〉から北端に近い〈太古の森〉までやってくるような酔狂だけとも思えない。思惑が知れないのであれば、おとなしく案内するフリをしつつ監視して、倒せる瞬間まで牙を研いでおく事にした。
冒頭だけでながーーーい!
まぁ主人公2人いる流れなのでお許しください……。
本編始まりませんでした! いつもこうだね……。
そんな訳で、アリザルフさんとシャルナちゃんはデルガさんと行動、ノワ様はデヴィオさんと行動する事になります。
ヴィドさん(デヴィオ)好きすぎてめちゃくちゃ会話増やしちゃったぜ……ガッツリとネタバレしちゃうと、ノワ様の狼化出来るので、銀狼のまじない師ヴィドさんとは狼繋がりなので〈同胞〉としています。正しく言うと〈同胞〉じゃないとは思うんだけど! 目がやや悪い分、鼻は利くとかだと(狼っぽさもあって)いいかな~と思って。
ノワ様は【アンデッド】の死臭を隠す為に黒百合の香水とか使ってるので……百合の香りよりは落ち着いた上品さと甘い感じの香りだといい。
そしてツンツン状態なゲルダさん(デルガ)ともその内仲良くなれると、いいね……!
長くなってしまったので、冒険開始は次回から!
基本の視点はアリザルフさんたちにしつつ、一方ノワ様は……みたいな感じで描いていく予定。


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