常闇の伴侶/老魔術師の昔語り①:序章
- 5月18日
- 読了時間: 7分
――炎はな、使いようによっては人を温めることもあれば、このように燃やし尽くすこともある。使い手次第なのじゃ。

この冒険回想録は、若き日の緋色の魔術師・アリザルフが、彼にとって「守るべきは何か」を悟るまでの、悔恨の冒険譚である。
▼はじめに
ここから始まる物語は、1人用TRPGローグライクハーフのd66シナリオ『常闇の伴侶』のリプレイ小説となります。天狗ろむは相変わらずリプレイを書くのがいまいちつかめていないので、読みにくさ等はご容赦頂ければ幸いです。ルールの独自解釈(誤解釈)がある場合がございます。
これは、拙作シナリオ『天駆ける狗も歩けば♨にあたる』の1回目の冒険後、の回想シーンとなっています。そのため、『常闇の伴侶』ならびに『天駆ける狗も歩けば♨にあたる』のネタバレがございますので、気になる方は遊んで頂いてから、またいらしてみてください。
加えて、今回は特殊なリプレイとなっており、「主人公2人が同じ冒険の時間軸で別々に行動する形」となる上に、過去に起きたできごととなっています。主人公1人プレイを同時に行う、みたいな感じです。その上、主人公の1人は冒険を失敗しています。「やり直しルール」ではない独自のやり方でやり直しているので、それもご注意ください。
若い頃のアリザルフお爺ちゃんが主人公となりますが、今の好々爺然とした態度に至る前は、「かなりの傲慢」でございました。ギャップがやばいと思います。
よっしゃー!! という方であれば特にお楽しみ頂けるかと思います。
元となった作品…常闇の伴侶
シナリオ作者……水波 流 氏
監修………………紫隠 ねこ 氏、杉本=ヨハネ 氏
無料の基本ルール+1stシナリオ『黄昏の騎士』のURLはこちら!→ https://ftbooks.booth.pm/items/4671946
今回のリプレイは、キャラクター作成は割愛します。
リプレイ本編はよ!というお方は、もうしばしお待ちくださいませ。
▼目次
序:ここ。情報掲載、目次、プロローグのページ。
前編:
プロローグ/冬の夜
〈天駆ける狗〉亭のある〈はぐれ者の村エンベニー〉の井戸の水が温かくなっていた件が、水源地である〈カウール山〉に発生した炎の魔力だまり(ノード)によるものだと分かった、その日の夜のこと――。
〈天駆ける狗〉亭の1階広間は、昼間の間は食事が出来るスペースとなっているが、夜の間は酒場となり、大人向けの場所になる。勿論、大人向けとはいえ、破廉恥な行為はマスターが許さない。ディジベラは先に休んでいるので、余計に静かな印象だ。酒とツマミを肴に愉しむ、静かな社交の場である。
そのバーカウンターに、褪せた緋色のローブを纏った老爺と、黒ずくめの美女が座ってそれぞれグラスを傾けていた。マスターがツマミのナッツとドライフルーツを差し出しながら、静かに声を掛ける。
「今日はお疲れ様、アリザルフ殿。……『彼』は行ってしまったのかい?」
「嗚呼。儂を弔う頃になったら戻ってくるらしいのう」
「おや、それは暫く先の話になりそうだ」
マスターが苦笑する。アリザルフと呼ばれた老爺の隣で赤ワインに見える飲み物を傾けていた美女が、鼻で笑った。
「どうだろうな。〈魔力だまり〉(ノード)の助力があったとはいえ、弟子の召喚した精霊に押し負けたのだろう? 弱ってきているのではないか?」
「貴様に途中で血を吸われなければもちっと戦えたんじゃがの~」
「ならばあの冒険者の血を寄こせば良かったものを」
「血を吸わない選択は無いのか貴様は」
「血を吸わない吸血鬼がいるなら会ってみたいものだな」
アリザルフと言い合う黒ずくめの美女の名は、ノワリリウム。会話の内容通り、吸血鬼だ。〈天駆ける狗〉亭は吸血鬼の住まう〈還らずの森〉にも程近い。理性の無い野生種の吸血鬼は討伐対象だが、ノワリリウムのような理性と知性の残る闇人とも呼ばれる吸血鬼は、時たま〈天駆ける狗〉亭を訪れる。種族を問わず、誰でもいつでも、何度でも歓迎するこの宿では、それ程珍しい客という訳でもない。とは言え、〈天駆ける狗〉亭には、現在ここを常宿として活動している吸血鬼殺しの娘・セレーナがいるので、ノワリリウムは久々の来店だった。セレーナは、同行者であるミダスの得た情報を元に、吸血鬼退治に出掛けていて留守なので、鉢合わせせずに済んでいる。セレーナの倒すべき吸血鬼は、ノワリリウムの一族とは違うので、万が一出会ってもすぐさま戦闘になるという事は無さそうだったりするのだが。
「……で、ゲテモノの生き血は口に合ったのかの」
アリザルフは険しい顔で、ノワリリウムの口にしている飲み物を睨む。吸血鬼である彼女好むもの……それは勿論生き血だ。今回は、〈カウール山〉の至るところに湧き出した温泉で暮らす〈温泉スッポン〉なるクリーチャーの生き血だ。冒険者に道中で生け捕ってきてもらったのだ。
「いや、美味とは言い難いな、やはり。しかし、力は感じる。滋養強壮に良いというのは頷ける話だな」
「捕まえてきてもらった温泉スッポンの身の方は鍋にさせて頂いたよ。女性陣は喜んでいたな、肌がツヤツヤになりそうだってね。甲羅は薬師の魔女殿に譲っておいた」
フェフェフェ、と嬉しそうな、不気味な笑い声が聞こえてきたような気がするが、幻聴だろう。
暫く今日あった事などの雑談がぽつぽつと続いていたが、不意にアリザルフが押し黙った。
「どうした。酔うにはまだ早いだろう」
「……何、不思議なものだと思ってな。貴様との腐れ縁もそうだが、かつての弟子にまた会えるとは、思ってもみなかった」
グラスに少し残ったホットワインを緩く揺らしながら、アリザルフは薄く微笑む。彼は〈はぐれ者の村エンベニー〉の近郊の森で隠居生活をしているが、自分の事を多くは語っていなかった。宿には常連としてちょくちょく顔を出しているし、〈天駆ける狗〉亭の名前の由来となった出来事にも関係しているらしいのだが。
「そう言えば、貴方たちはどういう出会い方だったんだい?」
「おや、話していないのか」
「話す訳なかろう……儂最大の汚点に近い」
「私には美しく見えたぞ。全身、緋色どころか赤黒く染まっていたからな」
「おっと、どうやら聞き甲斐のある話のようだね。ワインのお代わりを作ってこよう」
「儂、話すとは言っておらんのじゃが」
「今宵は私もいる。丁度良いではないか。冬の夜は長いのだから」
ノワリリウムが挑発的な眼差しでグラスを掲げる。彼女の命には、抗えない。アリザルフは、彼女と【血の契約】を交わしているからだ。彼にとっては忌々しい事この上ないこの【呪い】じみた繋がりも、彼女との出会った日に遡る。
ヤケクソとばかりに、アリザルフは殆ど空になったグラスでやや強めに応じたのだった。
天狗ろむが全然お酒飲めないので(下戸)、ふんわりそれっぽい雰囲気でお送りしています。もうちょっと楽しめるくらい飲めたら良かったんですが……カクテルだとか、バーで飲んだりだとか、憧れだけはあるので、〈天駆ける狗〉亭にはバーカウンターがあったりお酒の種類が豊富だったり、という設定です。活かしきれていないけどな……!
と言う訳で、アリザルフお爺ちゃんとノワリリウム様の過去話、はじまりはじまり!
如何にして二人は出会ったのか、【血の契約】って何やねん、な部分です。
あとは、冒険失敗しちゃった場合、ただやり直すのではなく、どう物語としてリカバリーするか、みたいな所の参考になったらいいな~なんて思ったり。
総じてほろ苦いリプレイとなる予定なので、お好みの方のみ楽しんで頂ければ幸いです。
そう言いつつ、プレイログはもう一年以上前とかのもので、ほぼ忘れている所を補完しながらなので、リプレイ執筆速度は遅めかなと思います。一気に書くのがちょっと大変そうなので、できごとを幾つかずつの更新に戻すことになりそうです。
いやしかし、常闇の伴侶、書籍化めでたーい!!
もうすぐ実物書籍を拝見出来そうなので楽しみで楽しみで……表紙といい、挿絵といい、NPCたちといい、雰囲気バッチリ過ぎて最高過ぎる。
このリプレイ書いてる途中でお迎え出来ると思うので、書籍版で改めて色々拝見しつつ、楽しく書いていきたいと思います。


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