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『リエンス家と大晦日の厄』序:半人前錬金術師ディジベラの冒険①

更新日:1 日前


  ――私だって、冒険したいもの!


 

 この冒険記録は、〈天駆ける狗〉亭の看板娘であり、冒険者としては半人前の錬金術師ディジベラと仲間たちが行く、好奇心と波乱に満ちた冒険譚である。


 




▼はじめに

 ここから始まる物語は、1人用TRPGローグライクハーフのd33シナリオ『リエンス家と大晦日の厄』のリプレイ小説となります。天狗ろむはリプレイを書くのがほぼ初めての試みなので、読みにくさ等はご容赦頂ければ幸いです。ルールの独自解釈(誤解釈)がある場合がございます。




 元となった作品…リエンス家と大晦日の厄

 シナリオ作者……東洋夏 氏


 無料の基本ルール+1stシナリオ『黄昏の騎士』のURLはこちら!→ https://ftbooks.booth.pm/items/4671946 

 


 今回のリプレイは、キャラクター作成は割愛し、キャラクター紹介とプロローグから始めます。

 



▶目次

   序:ここ。情報掲載、目次のページ。以下からキャラ紹介~プロローグ。

  



▶ディジベラ、冒険に出る。


※このリプレイはちょうど大晦日近辺に開始しました。ロングバケーション効果によりテンションが(※いつも通り)高めでお送りします。



 大晦日だ! 東洋夏さん作の大晦日シナリオをやろう!!


 という訳で、当初はNPCだったけどPC化させた〈天駆ける狗〉亭の一人娘ディジベラちゃんと、お目付け役ケンタウロスのレニアスさんで行かせて頂きます。


 シナリオ作者であり、リプレイも執筆なさっている東洋さん宅のはちゃめちゃ魅力的キャラクター、ロング・ナリクの大富豪・リエンス家当主のブラーク様と、我が〈天駆ける狗〉亭のマスターが旧知の仲、というありがたやな関係を結ばせて頂きました。冒険者時代のマスターの話はいずれ追々……ですが、今回はディジベラちゃんが冒険者デビューです。てってれー!


 ディジベラちゃんはチャマイの魔法学校の卒業生設定ですが、冒険者として旅を経験したことがない為、レベル7として扱います。振り分ける経験点も7点。魔術学校卒で知識だけは蓄えているので技量点は1点。従者に自ら作り出した牙うさぎを1体連れています。名前はウーちゃんとしましょう(安易)。今回作ったので幸運点は1点下げてます。


 レニアスさんは冒険者として黄昏の騎士をクリアしています。なのでレベル13。その時の冒険で儲けが凄かったので、装備はだいぶ整っています。従者にウォー・ドールを1体連れています。今回はお目付け役としてついてきているので、基本的にはディジベラちゃんの判定がメイン、レニアスさんは補助という形で進めたいと思います。

 二人の詳しい技能値などは以下の画像の通り。

 細かいキャラ設定


▽プロローグ



「お届け物です!!!!!」


 〈天駆ける狗〉亭に大音声が響いた。そのびりりとした衝撃で多少の痛みすら覚えた、丸みを帯びているが少し長い耳を擦って、ディジベラは玄関の扉を開ける。そこには思った通りの人物がいました。
「レニアスさん、お疲れ様です!」
「ディジベラ殿、ご機嫌よう。こちら、ロング・ナリクのとある騎士から預かりました」
 ケンタウロスであるレニアスは、冒険者をしながらその健脚を活かして荷運びの仕事も兼任しています。〈天駆ける狗〉亭の物資は彼に運んでもらう事も度々あって、よく助けられているのでした。ディジベラは渡された封筒を手に取る。少し触れただけでも分かる上等なもの。印籠がしっかりされており、宛名はダヴァラン……父であり、この宿のマスターでした。
「父さん、ロング・ナリクの騎士様からですって。毎年来てるやつよね?」
「嗚呼、もうそんな時期か……。そろそろ顔出さないと……とは思っているんだが」
 宛名の主は絶賛料理の仕込み中です。年末年始にかけて、大勢お客が泊まる予定なのでした。〈天駆ける狗〉亭が繁盛しているのはいい事なのですが、手紙の主への対応は今年も無理かもしれません。
 開けて構わないとの事だったので、ディジベラが代理で丁寧に封を切りました。流麗な筆跡で、時節の挨拶が書かれている……まではいつも通りの文面。その後に続く文を見て、ディジベラは目を丸くしながら声を上げました。
「父さん、『忙しいのは知ってるから、代理に娘さんを寄こしてくれ』ですって!」
「何だと?」
 流石に看過できない言葉だったのでしょう、ダヴァランが思わぬ速さでディジベラの元へ来ると、手紙を受け取って改めて読みました。その後に、大仰な溜息をつきます。
「あのお坊ちゃま……何を考えているんだか」
「直々に指名されちゃったんだもの、私が行ってくるわ! 冒険じゃないし、きちんと代理としてご挨拶したらすぐ帰ってくるわ、いいでしょ?」
「ロング・ナリクまでどれだけあると思っているんだい、ディジー?」
「今から出発すれば……一週間くらい?」
 ディジベラは冒険者に憧れていました。父も若い頃は冒険者だったそうだし、母も異国魔法の研究の一環で冒険に出たといいます。〈天駆ける狗〉亭には冒険譚の綴られた本が幾つもあって、幼い頃からそれらを読んで育ったディジベラが、冒険者に憧れるのは無理からぬことだったのです。
 しかし、父はなかなか許してくれませんでした。冒険でないのだから、良いではないか。ディジベラだって魔法学校を卒業して、心得はあるのに。
「その件ですが、私の脚ならば三日で済みますぞ!!」
「レニアス、何を言ってるんだ」
「とある騎士殿に、『どうせダヴァランは渋るだろうから、君に娘さんの護衛を頼むよ』との事で、既に前金を頂いておりまして」
「くっ……、どこまで用意周到なんだアイツは……」
「仕事に真面目なレニアスさんの評判を落とす訳には行かないわよね、パパ?」
「……。分かった、絶対にレニアスの傍を離れないこと、見知らぬクリーチャーを見てもすぐスケッチを始めないこと、見知らぬ相手に……」
「分かってるわパパ! レニアスさん、少し待ってて、準備してくるわ!」

 こうして、ディジベラ初めての長旅が決まったのでありました。



 こんなところでしょう!

 こうでもしないと多分、ディジベラちゃんが一生冒険者できないのでね、うん……。

 という訳でチャマイからロング・ナリクへ……の道中は割愛します。

 長いこと戦争を続けているドラッツェンからロング・ナリクに行くのは難しいでしょうし、山越えをするのか、洞窟や坑道とかありそうかなとは思ってますが。

 距離感皆無なので、チャマイ出発して赤錆川沿いに進んで山のふもとで一泊、山越えした先で一泊、そしてロング・ナリクに辿り着いてリエンス家のお屋敷へ……みたいな感じに。そこで執事頭さんから内密の依頼を受けた事にしましょう。



▽リエンス家


 レニアスの背に乗り、運んでもらい三日ほど。
 旅慣れした彼に道中で様々な事を教えてもらいながら、ディジベラはとうとう白亜の神聖都市ロング・ナリクへと辿り着きました。
「ここが、ロング・ナリク……! 人がいっぱいね!」
「そうですね。特に今は年末を控えて、慌ただしくもどこかめでたい雰囲気です」
 きょろきょろと興味津々そうに辺りを見回すディジベラに微笑を向けながら、レニアスが街の様子を説明してくれました。度々この地を訪れている彼の言葉は、現地の案内人の如く流暢です。1000年近い歴史を誇り、セルウェー教の神聖都市で、かつては二神教とセルウェー教の両方が栄えていたと言います。石造りの建造物が多く、世界的に有名な大聖堂を筆頭に教会、修道院と宗教的な施設が立ち並ぶ通りを進んでいくと、人通りが特に多くなりました。
「はぐれてはまずい。どうぞ手を」
 レニアスが自然な動作で手を差し出してくれたので、ディジベラは有難く右手を乗せました。レニアスは目的地まで背に乗せて運ぶと申し出ていてくれたのですが、初めての土地は自分の足で歩いてみたかったのです。ディジベラの歩調に合わせるのは大変だろうに、レニアスはゆっくりと蹄を鳴らしつつ先導してくれました。そうして、大富豪リエンス家の屋敷へと辿り着いたのです。

「大きいわねぇ。こんな貴族のご当主様と、父さんが知り合いだなんて」
 俄かには信じがたかった。ディジベラにとっては、宿屋のマスターである父の顔しか知らないのです。元冒険者のお陰か、確かに知り合いは多く、善悪などの種族を問わず宿にはお客がやってくるのだけれど。ごくたまに見せる気の強さや、狩りの手伝いでの腕っぷし以外は、穏やかで理知的な父親なのでぴんと来てはいなかったのでした。
 門衛と顔見知りらしいレニアスが挨拶すると、すぐさま片翼であるが身なりと姿勢が良く、猛禽の顔を持つ鳥人の男性が二人の元へとやってきました。
「ツェスさん、こちらがダヴァラン殿のお嬢さんです」
「初めまして、父ダヴァランの代理で参りました、ディジベラと申します」
「遠路はるばるようこそいらっしゃいました。執事頭を務めるツェスと申します。ご案内しましょう」

 執事に連れられ、広大な屋敷の豪華絢爛な玄関ホールに通されたディジベラは、あまりの喧騒に度肝を抜かれました。あちらこちらで下働きの男女が床を磨き、壁のほこりを払い、装飾品を磨き上げています。かと思えば、商談に来たらしき身なりも恰幅も良い御大尽がその間をずんずん歩いて行ったり、聖槍士軍の飛翔騎士が一団になって部屋から出てきたり、セルウェー教会のお偉方とすれ違ったりするのでした。
 まるでロング・ナリクの縮図を見ているかのようです。
「旦那様が直々にお会いになるということです。くれぐれも粗相のないように」
 ひときわ重厚な扉の前で、猛禽の頭を持つ鳥人の執事はディジベラに念押ししました。
 そしてノックをして部屋に入ったのですが……。
 部屋の中には誰もいませんでした。
「あれ……? ツェスさん、ご当主様は透明になる力を持っていたりするんですか?」
 どういうことなのでしょう。困惑するディジベラに、執事は言いました。
「いいえ。ですが時折透明になったかと思われる程、大胆かつ華麗に執務を放り出し抜け出してしまいますが……いえ、お忘れ下さい。ディジベラ殿、来て頂いて早々に恐縮ですが、依頼を申し付けさせていただきたい。ご当主、ブラーク・オ・リエンス様を探していただきたいのです。ここ三日ほどお戻りになられず心配をしております。執事頭たる私にも理由をおっしゃらず、何処かへ出かけてしまわれたのです。旦那様のことですから何か深い理由があるのは確かです。しかし、わかりますね、公にするわけにはまいりません。ご家族にも急な視察に出られているのだと話して、秘密にしてあります。穏便に、そして内密に調査をお願いしたい。それがリエンス家からの依頼です」
 似顔絵を一枚渡されました。中年に差し掛かった年齢ながらまだ若々しい顔つきの、黒髪の男性が描かれています。かつては聖槍士軍でいちばん勇猛な騎士だったそうです。
「ご当主に呼ばれて来たのに、ご当主が行方不明なのですか?」
「そうなのです。面目次第もございません」
「私の目的は、ご当主に年末年始のご挨拶をする事。だから、探すには異論はないのだけど……これって冒険にはならない、わよね? 困ってる人助けだもの!」
「そうですな。もし危険があれば私が守ります故」
「年末の雑用に雇われたという体であれば、家の中の者にも警戒されないでしょう。首尾よく終わることを願っていますよ」
「分かったわ! すぐに見つけてきてあげる!」


★今回の冒険の目的★

 屋敷の雑用をこなしながら、行方不明のリエンス家当主・ブラークの行方を探そう!



 という訳で、次回から前編後編に分けて、ディジベラちゃんの冒険譚をお届けします。果たして無事にブラーク様を見つける事が出来るでしょうか!

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