top of page

呪われた血族の牙城:8話目~娘、再び入城す~

更新日:2月12日



▶前回のあらすじ

 

 1回目の冒険で、無事に吸血鬼ヴェルゴウルを倒したセレーナちゃんとミダスさん。

   セレーナちゃんの経験点1点は一旦保留に。道具や装備もそのままで挑みます。

 ミダスさんは経験点1点を器用点に振り分け、最大値を5点に。ただし、前回の冒険で【運命の切り札】を使用している為、現在値4点から開始です。装備もそのままで。銀の片手剣は持っています。


 堕落都市ネルドに安寧が訪れたかに思われました。

 しかし、ヴェルゴウルを吸血鬼にした張本人であり、「はじめの吸血鬼の一族」である闇貴族の一人、アルザハイオンが遺志を継ぎ、人々を再び連れ去り始めました。警鐘を鳴らしたアンデッドの専門家、カットナー老人も連れ去られてしまいます。

 カットナー老人は、アルザハイオンに対抗できる魔法の道具を秘密の場所に隠しており、その秘密が暴かれるまでは、囚われたとしても殺される事は無いだろうとの事。今回はそのカットナー老人救出の為に、再び古城に足を踏み入れます。


 それでは第2回目、行ってみましょう!



▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽



「次の吸血鬼を探すべく、専門家に話を伺おうかと思っています」
 セレーナの【血の呪い】を解く術は、『吸血鬼を7体倒すこと』。先日、吸血鬼ヴェルゴウルを倒したので、残るは6体だ。
「吸血鬼の専門家がいるのか?」
「正しくはアンデッドの専門家ですが。両親もお世話になった方らしいので、吸血鬼の情報も知っているかと」
 そもそも、セレーナがネルドに向かっていたのは、専門家に会う為だったのだ。その道中で、怪我をしたミダスを拾って介抱し、ネルドに着いていざ情報収集を、と思った矢先に、ヴェルゴウル討伐の依頼を受けたのだ。吸血鬼を探す手間が省けたので良かったといえばそうではあるのだが。
「この辺りの白い壁のお家にお住まいだと聞いたんですが……見当たらないですね」
「あれじゃないか?」
 セレーナが通りを眺めて首を傾げていると、ミダスが反対側を指し示して声を掛ける。ミダスの言う方を向けば、確かに白い壁の家を見つけた。
「……おかしいですね、絶対あっちだと思ったのに」
「方向音痴は皆そう言う」
「で、でも、そのお陰でミダスさんに出会えた訳ですし!」
 セレーナが道に迷った先に怪我をしたミダスがいたのだった。その点については悪くないのだが。しっかりしていそうで、そういう抜けた所があるから、妙に放っておけなくなるのだろうな、とミダスは思う。
「……あの、もしかして、うちの祖父に御用の方でしょうか?」
 そんなやりとりをしていると、専門家の家から若い女性が出てきた。二人の格好から、冒険者だと分かったのだろう、ぺこりと頭を下げて、声を掛けてきた。
「えぇと、アンデッドの専門家のカットナーさんの……」
「孫です。孫のアンジーと言います。ここでは何ですから、どうぞ」
 アンジーは二人を家の中へ案内した。家の中のそこかしこに、ニンニクが干してあったり十字架が施されていたりするので、半吸血鬼であるセレーナはそわそわと落ち着かない。椅子を勧められ、セレーナが座り、その背後にミダスが立った。珍しく柱時計がカチ、コチと規則正しく時を刻む音が響く中、アンジーはセレーナの正面の椅子に座ると、俯きがちに話し出す。
「祖父にご用事があるとは思うのですが、実は……祖父が一昨日から行方不明なのです」
「えっ!?」
「最近、ヴェルゴウルって吸血鬼が住みついていた古城があったでしょう? つい先日、ヴェルゴウルはどなたかに討伐されたそうですが、更に強い吸血鬼が遺志を継いで、その古城に人々を攫っている……と祖父が申しておりました」
「そのヴェルゴウルは、私たちが倒したのですが、あそこにまた吸血鬼が……!?」
 その情報は知らなかった。アンデッドの専門家であるカットナー老だからこそ掴んでいた情報だったのかもしれない。セレーナの言葉を聞いて、アンジーはパッと顔を上げた。
「まぁ、貴方がたが! 吸血鬼退治のであれば、お願いです。祖父を、お爺ちゃんを助けだしては下さいませんか」
 アンジーは頭を深々と下げた。セレーナはミダスをちらりと見やる。ミダスは同行者であるので、セレーナが請けると決めれば従うのみだ。お人好しな彼女の事が、十中八九請けるだろうな、と思いつつ頷くと、セレーナはアンジーに説明を促した。
「なら、カットナーさんはその吸血鬼に攫われてしまったんですか?」
「証拠はないのですが……祖父は、その吸血鬼アルザハイオンに対抗出来る魔法の道具を持っているのです。それを恐れたのでしょう」
「その魔法道具はどこに?」
「秘密の場所に隠したと、以前に。私も知らず、他の孫たちにも教えていないようでした。だから、祖父だけが知っているのです。……この秘密の場所を敵が知るまでは、祖父は生かされる筈……」
 アンジーは両手を固く組み合わせた。小さく震えており、彼女の顔色はあまり良くない。祖父の事が心配で、眠れずにいたのであろう。そうであって欲しい、という祈りも含まれている情報だが、一理ある。アンデッドの専門家であるカットナー老人がそう易々と切り札の秘密を話す訳がない。しかし、拷問などを受ける可能性もある。助けに行くならば、早ければ早い程、無事な確率が高まる。
「分かりました。お引き受けしましょう。元々、カットナーさんに聞きたい事があったのですし」
 セレーナが頷いて了承すると、アンジーはうっすら涙を浮かべてほっと息を吐いた。
「本当ですか……! ありがとうございます! ……アンデッド研究に熱心な祖父の事を、他の家族はあまりよく思っていなくて。私も家族から、祖父には構うな、と釘を刺されていたのですが。私にとってはとても大事で、愉快な祖父なのです。どうか、宜しくお願いします……!」
「最善を尽くします。……ご心配とは思いますが、貴女が倒れたりしたら、カットナーさんはきっと悲しみます。だから、食事や睡眠は、取れる時に取って下さいね」
「は、はい……!」
 再度頭を下げるアンジーに、セレーナは柔らかな声で労わる。彼女もそのように、両親の帰りを待っていた時期があったからなのだろう。ミダスには物心ついた時には既に家族はいなかったから、あまりぴんと来ていなかったが、彼女ら二人はそれで心を通わせたらしかった。手を握り合い、何度も頭を下げられながら、カットナー老人宅を後にする。
「さてと。またまたあのお城に行く事になろうとは思いませんでしたね」
「……報酬の話はしていなかったが良いのか」
「あっ! ま、まぁ、カットナーさんを救い出せば、色々もらえるかもしれませんし。情報なり、道具なり?」
「魔法の道具は流石に出さんと思うがな」
「ご老人が太っ腹な事を祈ります! さぁ行きましょうミダスさん!」
 やれやれ、と肩を竦めながらも、ミダスはセレーナの後を追うのだった。

△△△△△△△△△△



 小娘に振り回されながらも、ちゃんとついてくおじさま美味しいなぁもぐもぐ。

 そんなこんなで始まりました、2回目の冒険。

 早速1枚目のできごとを決めましょう。



▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼



1枚目 🎲53:〈鮮血を好む夜の獣〉


出現数:🎲6+5=11  レベル:2  宝物:なし

≪反応表≫ 1~2【逃走】 3~6【敵対的】


 出現数決めロールでも最大値出しがちぃ! と嘆いたのも束の間、主人公が【血の呪い】を受けている場合は、反応が【友好的】になるですって! 命拾いしたぁ。




▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽



 古城に辿り着く頃には、夜闇が差し迫ってきていた。不利な要素は多いが、老人を救う為には日の出など待っている余裕はない。
「……待て。正門に何かいる」
「見張りでしょうか?」
「そのようだ。前回の主は、自衛を疎かにしていたが、今回の主は抜かりないようだな」
 前回、玄関ホールをうろついていた〈血の奴隷〉たちが、倍以上の数となって、正門前でぼおっと立っている。彼らに気づかれずに正門から侵入するのは無理に近そうだ。倒すにしても、数が多い。囲まれて逃げ場が無くなってしまう可能性が高かった。
「他に入れる場所ってあるかしら……」
「裏手に回ってみるか。……そこがもし空いているなら、罠が待っているだろうがな」
 二人は岩陰に隠れながら、古城の裏手に回る。そこには使用人用であろうこじんまりとした入口があった。〈血の奴隷〉もおらず、警備は手薄そうだ。
「何かが待ち構えているだろうとはいえ、入らない事には始まりませんからね」
「それもそうだ。……気は引き締めていくぞ」
「はい!」
 ぎい、と軋む扉を開ける。台所として使われていた部屋らしく、竈があり、壁には調理器具がかかっている。そこかしこに肉の塊があり、部屋全体が血生臭い。まな板の上で切られかけているのは、一体何の肉であるのか、それを考えるのはやめた方が良さそうだ。
「人の気配は無さそうですが……ひゃー!?」
「おい、セレーナ!」
 きょろきょろと辺りを見回していたセレーナが、調理器具の一つを手に取ろうとした。それが、動いた! いや、飛んでいる!
 バサバサと羽ばたく黒い影たちは、セレーナを取り囲む。銀の剣の柄に手を掛けたミダスだったが、くすくすと笑いだしたセレーナの様子を見て一瞬だけ止まる。
「おい」
「大丈夫です。この子たち、じゃれてきてるだけみたい」
 黒い影の正体は、巨大である上に吸血行動もするが、可愛い顔をしているコウモリたちだった。体に生えた毛は思いのほかふわふわとしており、翼部分はビロードのような手触りの良さ。それらが頬ずりするかのように、セレーナの顔を掠めて遊ぶように飛び回っている。
「ふふ、くすぐったい。可愛いですね」
「コウモリは吸血鬼の眷属だ。……もしや吸血鬼だと思われてるんじゃないか」
「え! 私、人間なんですけど!? ミダスさんにもそう断言してもらったのに!」
「その件はあまり蒸し返すな……」
「私はとても嬉しかったですよ」
 嬉し気に微笑まれて、ううむ、と唸る他無かった。ヴェルゴウルと戦った際に、セレーナを惑わそうとする吸血鬼の言葉を押しのける為に、柄にも無い事を言ってしまったものだ。忘れてもらいたいものだが、彼女の雰囲気から察するに、恐らくしっかりと記憶に刻まれてしまっている。……良き思い出の一部として。心臓がむず痒くなってきたミダスは咳払いして、改めて部屋を見渡す。とりあえず、このコウモリたちには害意が無さそうであるし、安全に次の部屋に進めるだろう。
「……行くぞ。コウモリと戯れる為に来た訳じゃないからな」
「そうですね。少し名残惜しいですが、またね」
 セレーナが手を振ると、コウモリたちはおとなしく元の場所に戻っていった。

△△△△△△△△△△



 コウモリ、家族が拾ってきたので一時期保護して、その後野生に返したのですが、それを思い出しながら。

 種類にもよるのでしょうが、ふわふわで気持ち良い肌触りの毛なんですよね……。可愛かったなぁ。

 さて、思いのほかほっこりできごとになりましたが、次はどうでしょうか!



▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼


2枚目 🎲15:〈疑わしい村人〉

 

 わー! 前回の冒険の依頼者の奥さんに出会えた! けど1d6振るのすごく怖い! でも見つけちゃったら救う他ない! 女神様どうかー!


 運命の🎲は……4! 


 やったー!!!! 奇跡的に血の奴隷にされてません!!! 


 特に能力の無い、戦わない従者として連れて行き、無事に冒険を終えれば夫の元に帰れるそうですが……ルールを順守するならば、従者点が足りないのだけど……ここはGMでもある天狗ろむが連れ帰りたいのでOKにします!! だって見つけちゃったんだもの!!



▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽



 台所を出ようとした時、何者かがすすり泣く声が聞こえた気がして振り返る。
「今、何か……」
「……あ、私も聞こえました。こっちかしら……誰かいますか……?」
 台所の隣、食糧庫として使われていたらしき部屋から聞こえてくる。恐る恐る扉を開けてみれば、部屋の奥に一人の女が磔にされているではないか!
「あ……どなたか存じませんが、お助けを……」
「今、縄を解きますね!」
 ミダスが怪しむ暇もなく、セレーナが駆け寄ると女を解放してしまう。敵だったらどうするのだ、と窘めたくもなるが、彼女はそういう性分なのだ、言ってもやめる事は無いだろう。
「嗚呼、本当にありがとうございます、冒険者の方……」
「だいぶ衰弱しているご様子ですね。無理はなさらないで」
「歩くだけなら、大丈夫です、何とか……」
 女はシエラと名乗った。ヴェルゴウルの食事の支度をやらされていたらしい。詳しくは話さなかったが、恐らくはおぞましい料理であったのだろう。こみあげる吐き気で顔を青くするシエラの背を、セレーナが優しく擦った。ヴェルゴウルが倒され、解放されるかと思われたが、新たな主もまた彼女に食事の支度を命じたのだと言う。
「従わなければ夫を殺す、と……夫が無事ならば私はどうなっても、と耐えて何とか……」
 シエラがそっと自分の片耳に触れる。その耳にあるイヤリングを見て、セレーナははたと気づいた。
「貴女の旦那様は、貴女と同じイヤリングをしていますか? そうであるなら、私たちの依頼人です」
「えぇ、そうです。嗚呼……それなら、あの人は無事なのですね……? 良かった……」
 ヴェルゴウルを倒してくれ、と血走った目で依頼してきた彼は、確かに片耳にだけイヤリングをしていた。同じ意匠のものを、夫婦で分けてつけているのだろう。
「ミダスさん。相談なのですが……」
「ここにこのまま待機させるのは危険だろう。うろついているクリーチャーに襲われかねない。かと言って一人で帰らせるのも同じく危険だ。外の警備が手厚くなっている。そして俺たちには今すぐ送り届ける時間の余裕はない。……彼女を見捨てないのであれば、俺たちの目的が達成されるまでは一緒に行動するのが無難だろうな」
「……凄い。私が言いたい事、心配してる事、何で全部分かるんですか?」
「お前のお人好しぶりは身に染みてるからな」
 セレーナがシエラを助けたいのは聞かずとも明白だった。しかし、今回の目的はカットナー老人の救出である。寄り道はしていられないが、彼女一人では道行くクリーチャーにやられて無事では帰れまい。と、なれば答えは簡単に出る。
「勝手な行動はしない事、俺やセレーナの言う事はしっかり聞く事。道中の安全が確保されるまでは静かに待っている事。これらを守れると固く誓え。ただし、絶対に守るという保証は出来ない。それでも良いならば、だ」
 ミダスが出した条件に、シエラは静かに頷いて同意した。元々、捕らえられても正気を保てていたのだ、芯の強い女性なのだろう。
「では、行きましょう。もし危ない時は私が守りますから」
「いえ、私にはどうかそこまで構わずに……貴方がたは、為すべきを為して下さいませ」
「貴女を無事に送り届ける事も、私の為すべき事なのです。だから、そんな寂しい事は仰らないで」
 シエラの瞳が潤んだ。本当はずっと心の中で助けを求めていたのだろう。彼女の涙が落ち着くまで、セレーナが肩を抱いて擦っているのを、ミダスは見つめていた。
――この娘の言葉は、やはり暖かくて、甘い。
 それを、誰にでも与えるのだ。
 困っている人、助けを求めている人、傷ついている人たちに、平等に。
(そうだ。……俺にだけ、ではない)
 確かに命を救われた。でも、自分ではなくても、セレーナは助けたのだろう。
 そこに僅かな寂しさと怒りを覚えかけて、ミダスはそれを封じた。お人好しを彼女の美点と思っている一方で、それが自分だけに向けられて欲しい、などと。そんな、独占欲、など。
(……捨てねばならん)
 心の内を殺す事には長けている。ミダスは小さく息を吐くと、気を切り替える。今は、目の前の事に集中しなければ。
「……先を急ぐぞ」
「はい」
 二人の様子が落ち着いたのを見計らい、ミダスは静かに声を掛けた。セレーナの返事だけを聞いて、背を向ける。彼女がシエラに柔らかな慈愛の表情を向けているのを、今だけは見たくなかった。

△△△△△△△△△△



 ミダスさんの心が乱されてる! いいぞ!(?)

 という訳でその場のノリで命名&キャラ付けしてしまった最初の依頼人の奥様シエラさんを従者に加えます。人妻っていいよね(?)。


 無事に帰してあげたーい!!!!(くそデカボイス)


 セレーナちゃんがどんどん聖母みというか、人たらしみが出てきましたね。これがバブみ? 違うか??


 という訳で同行者が増えつつ、ドキドキの3枚目は次話!


▲▲▲▲▲▲▲▲



Comments


bottom of page