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冒険者と海の家/半人前錬金術師ディジベラの冒険!番外編~〈天駆ける狗〉亭の夏休み~

更新日:9月1日


 ――「よし、もう怖いサメはいなくなったわ! 皆、安心して楽しんでいって!」



 

  この冒険記録は、〈天駆ける狗〉亭の看板娘であり、冒険者としては半人前の錬金術師ディジベラと仲間たちが行く、好奇心と波乱に満ちた冒険譚である。


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▼はじめに

 ここから始まる物語は、1人用TRPGローグライクハーフのd33シナリオ『冒険者と海の家』のリプレイ小説となります。天狗ろむは相変わらずリプレイを書くのがいまいちつかめていないので、読みにくさ等はご容赦頂ければ幸いです。ルールの独自解釈(誤解釈)がある場合がございます。



 元となった作品…冒険者と海の家

 シナリオ作者……月 氏

 配布先ページ……冒険者と海の家 - yrno


 無料の基本ルール+1stシナリオ『黄昏の騎士』のURLはこちら!→ https://ftbooks.booth.pm/items/4671946

 


 夏だ!!!!!


 海だ!!!!!!


 海の家を手伝おう!!!!!!!!!!!!!



 という訳で(?)、「ローグライクハーフの夏」主催の月さん作『冒険者と海の家』でカサブランカさんたちのお手伝いします!


 今回せっかくなので、うちのこ総勢14名で押しかけることにしました。


Q、何で?


A、皆で海に行きたかったから……。



 はちゃめちゃ変則的なプレイになるので、経験点は頂きません!

 押しかける14名はこちら!!


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1:錬金術師・ディジベラ

 〈天駆ける狗〉亭看板娘。出演作『リエンス家と大晦日の厄』などリプレイ、拙作d66シナリオ『天駆ける狗のディナーは■ミの鍋』など拙亭のリプレイやシナリオには大体出てくる。

(画像ではうっかりレベル14になってますが、レベル15ですね……)



2:戦士兼怪物狩猟者・マスター(ダヴァラン)

 〈天駆ける狗〉亭マスター。若い冒険者時代の出演作『ドラゴンレディハーフ』リプレイ、拙作d66シナリオ『天駆ける狗のディナーは■ミの鍋』など。拙亭のリプレイやシナリオには大体出てくる。


3:吸血鬼殺し・セレーナ

 【血の呪い】を解く為吸血鬼退治をする娘。出演作『呪われた血族の牙城』リプレイ。


4:暗殺者・ミダス

 セレーナに命を救われ、吸血鬼退治の旅に同行する。出演作『呪われた血族の牙城』リプレイ。


5:魔猫・フィーダ

 自称『かみさま』で信者を増やすべく旅に出る。高飛車お嬢様口調で世話焼き。出演作『四猫亭の幽霊』リプレイ。


6:ケンタウロス・レニアス

 ド真面目・誠実・堅物なクソデカボイスの運び屋。出演作『リエンス家と大晦日の厄』リプレイ、拙作d66シナリオ『天駆ける狗のディナーは■ミの鍋』。


7:オーク・ドミニア

 大らかで大食漢な商魂たくましい薬師娘。新たな薬、もしくは毒を探してあちらこちらへ。出演作『豆の木が守る宝』リプレイ、拙作d66シナリオ『ヴォンダンス~踊らぬ犬は冬に鳴く~』。


8:聖騎士・スノウスノウ

 男装の麗人でザ・王子様な物腰の美系騎士。出演作『納涼!ナリク夏祭り』。


9:緋色の魔術師・アリザルフ

 〈天駆ける狗〉亭の常連。好々爺で飄々としているが、内に熱いものを秘めたお爺ちゃん。出演作は『常闇の伴侶』リプレイ(予定)、拙作d66シナリオ『天駆ける狗のディナーは■ミの鍋』。


10:吸血鬼・ノワリリウム

 長年アリザルフお爺ちゃんにご執心な美女吸血鬼。出演作は『常闇の伴侶』リプレイ(予定)。


11:末裔・カッツ・オブシー

 普段はルララ語(?)で話す、元トーンの闘技場勤めの闘士。標準語で話すとド低音ボイスで武士か騎士めいた物々しさ。出演作『幽霊屋敷の果実酒』、『クトゥウルウの聖なる邪神殿』リプレイ(予定)、実はこっそり『納涼!ナリク夏祭り』にも。


12:獣使い・リュコ

 ディジベラの年下ややヘタレ幼馴染。近所のオストリッチ牧場の手伝いをしている。出会った時からディジベラに絶賛片思い中。出演作『ローグライクハーフ版昆虫都市』リプレイ(予定)。


13:ガーゴイル・ガーちゃん

 若い頃のマスターと、奥さんになる前のネロリムニによって封印を解かれた犬型悪魔のガーゴイル。本名もあるが封じられており、ディジベラに再名付けされてしまった。出演作『炎の王墓』(予定)。


14:おどる剣三兄弟・ルー&ケーン

 遺跡で守番をしていたが若い頃のマスターに発見され、剣の腕前に惹かれて勝手についてきた。三兄弟だったが、炎属性の長男オードは折れてしまっている。氷属性ルーはクール系、雷属性ケーンは武士みがある。出演作『炎の王墓』(予定)。



以上! 多ッ!!!!!



Q、おどる剣は2振りなら、15名じゃね?


A、彼らは3兄弟で1つだから……😢



 それぞれキャラ紹介とステータス載せるとそれだけで文量アップしてしまうので、今回は割愛します。画像に載せておきました。使用ステータスは現時点のものとしてます。

 リプレイ書いてあるキャラクターたちはそれ読んで頂ければと思います!!(横暴)

 リプレイ予定の子たちも出たらそれ読んで頂ければと思います!!(投げやり)


 リプレイは関係性厨のため、大体PC2人の組み合わせでやってるんですが、今回うちのこ同士の色んな掛け合いが見てみたいなと思って、今回はこの14名のあみだくじで組み合わせを決めました。

 できごと7つを、あみだくじで決めた2人組×7セットで1つずつやってもらう感じです。

 中間、最終イベントの2人組は改めてあみだくじして選出しました。


できごと中間と最終含めて全部で8個じゃん!!!!!! 

 と書き始めてから気付きました。愚かなの?(そうだよ)
 なので本来だと(以下シナリオから引用)

1~3回目:表の出目d33の〈できごと〉が発生
4回目:〈中間イベント〉
5~7回目:表の出目d33の〈できごと〉が発生
8回目:〈最終イベント〉

 なのですが、最終イベントを9回目にさせていただく事にしました!

 全員話すだけで大変な騒ぎになりそうですが、いっちょやってみましょう!

 よそのこNPCさんについては口調や性格その他諸々、違うかもしれないのですがご容赦ください。


 


◆夏休み、始まる 


 その日、とある海の家に、人間の他にエルフ、魔猫、オーク、ケンタウロスにガーゴイル、はては末裔まで、多種多様な人物が沢山集まっていました。お客ではなく、働き手として。
「アナタたちが今日手伝ってくれる人ね! ……って、あらッ、ディジーにマスターじゃない!」
 屈強な体格の『乙女』が声を掛けてきました。見知った顔を見つけて、大輪の花のような笑顔を見せます。
「カサブランカさん、お久しぶりです!」
「やぁ、元気そうで何よりだ」
 金髪に空色の目をしたエルフの娘・ディジベラと、砂漠エルフの父・マスターことダヴァランが彼女の前に進み出ました。カサブランカは以前、彼ら親子が営む宿〈天駆ける狗〉亭に泊まった事があったのです。
「二人にこんな所で会えるなんて、嬉しいわ。でも、お宿の方は良いの?」
「私も嬉しい! 実はね、冷蔵ゴーレムが壊れちゃって、修理中なの。それだと冷えたエールとかも出せないし、商売あがったりだから、いっその事お休みにしちゃおうって事になって」
「久々に親子水入らずで海でも行こうか、と思ったら、宿に泊まる気だった連中もついてきてしまってね」
 マスターが苦笑しながら、背後で思い思いに騒ぐ面々をちらりと見やりました。

『海でのバカンスね……わたくしにぴったりじゃなくって?』
「そうだね、銀月のレディ。ただ、砂地はかなり熱くなっているだろうから気を付けて」
 人サイズ程もある大きな、銀色にも見える灰色の魔猫・フィーダを気にかけているのは男装の麗人の聖騎士・スノウスノウ。

「これが本当の海ですか……! 広いですね、ミダスさん」
「前はアリクララ湖が海だと思っていたんだろう」
「だ、だってアリクララ湖だって充分大きいじゃないですか……!」
 キラキラした眼差しで海を眺めているのは、大きな麦わら帽子を被った白い肌の娘・セレーナ。相槌を打つのは、壮年の男・ミダス。

「お前は『海』って柄じゃなかろうに……」
「貴様こそだろう。でも、たまには良いものだ。日射しがキツイのが困りものだけどな」
 岩に腰掛け、やや暑そうなローブを纏っているものの涼やかな顔のままの緋色の老魔術師・アリザルフ。その隣に立つのは、大きな傘を広げた美女・ノワリリウム。

「海の家って、ご飯も用意するんでショ? 美味しそうな匂いがするネ~」
「待つんだドミニア殿!!!!! 貴女が先に食べ始めたら提供するものが一切なくなってしまう!!!!!」
「うるサっ! レニアスは暑さ知らずっていうカ、相変わらず元気だよネ」
 くんくんと鼻を鳴らしているのは、大柄なオーク娘のドミニア。それを砂浜に響き渡る大音声で止めようとしているのはケンタウロスの青年レニアス。

「なーーーんで俺様が海の家なんぞ手伝わなきゃならねぇんだ!」
「善行しないと、本名の封印解けないからでしょ」
「地道に励む他あるまい」
 じたばた暴れているのは、犬型悪魔のガーゴイル・通称ガー。その傍でふわふわ浮きつつ宥めているのは、剣型ゴーレムのおどる剣・ルーとケーン。

「……ディジーと、海……!!」
「ルラァ(頑張れ、青年)」
 物凄ーく遠くから、カサブランカと話しながら楽しそうに笑うディジベラを見つめるのは、幼馴染の青年・リュコ。彼の肩をぽんと叩き、訳知り顔(に見えなくもない顔で)頷いているのは末裔・カッツ・オブシー。彼はその後、砂地に石を積んで満足そう(に見えなくもない顔)をしています。


「……ほんと、沢山来たわねぇ」
 改めて彼らを眺めるカサブランカは、仕事の割り振りをどうしようか悩み始めました。そこへ、店の奥から控えめそうな雰囲気の女性が、手に幾つかのバッジを持って現れます。
「あっ……こんなにいらしてたんですね。バッジ足りるかな……えっと、こんにちは……」
「こんにちは! 私はディジベラ、気軽にディジーって呼んでね」
「……じゃあ、ディジーさん。私はアシュレイ、です。今日はよろしくお願いします」
 ディジベラとアシュレイの二人はぺこりと頭を下げあう。その間、カサブランカは店の奥から割り箸を持ってきて、それらの先端に羽ペンで数字を書いていく。
「さ! みんな、集まってちょうだい! このくじを引いてもらって、番号が同じ人同士で仕事をしてもらうわ! ついでに、アシュレイから『店員バッジ』を貰って、分かりやすい所につけておいてちょうだいね」
「カサブランカさん……慣れた人達同士でやってもらった方が、良いのでは……?」
「それじゃ、折角の非日常感が薄れちゃうじゃない? こういう時は刺激的な方がいいのよ!」
「そ、そういうものですか……なるほど……」
 ディジベラたちもそれで構わないと答えて、それぞれ割り箸を1本ずつ引きました。
「とりあえず、それぞれのコンビで1つずつ仕事をこなしてもらうわ。緊急の仕事は、手が空いてる人に頼むわね。さーて! 仕事を始めるわよ!」
「おー!」
 こうして、賑やかな海の家のお手伝いが始まったのでした。

◇◆◇◆◇


プロローグなっが!

 そりゃ14(※15)名もいれば1台詞だけでも大変な事になりますわな!

 という訳で、天狗ろむが大ファンである、カサブランカさんの提案という形にさせて頂いて、ランダム組み合わせコンビ×ランダムお仕事です。

 ちなみに、こっそり末裔・カッツ・オブシーは【深き祭壇】で祭壇作りしました。出目32です。

 カッツ 幸運点6→5


 まず1組目はこちら!


◇◆◇◆◇


 

◆お手伝い1組目 アリザルフ&レニアス 🎲33 〈大ガニ〉


 レニアスさんに仕事を決めてもらいました(d33を振ること)。

 流石、仕事熱心な男前は一番難儀そうな仕事を選んでくれました!

 この二人は〈天駆ける狗〉亭の常連同士なので、恐らく顔見知りではありましょう。

 アリザルフお爺ちゃんは、〈天駆ける狗〉亭のある〈はぐれ者の村エンベニー〉から少し離れた山の中で暮らしてますので、もしかしたら物資を届けてもらったりなどもあるかもしれません。


◇◆◇◆◇


「アリザルフ殿!! 今日は宜しくお願い致します!!」
「年寄りじゃがまだ耳も目も元気じゃ、もう少し抑えてくれて大丈夫じゃよ」
「申し訳ありません!!!!!」
 ケンタウロスのレニアスが大音声で謝りながら頭を下げました。キーンとした耳鳴りを感じながら、悪気が一切無いのが良いんだか悪いんだか、と緋色の老魔術師アリザルフは苦笑するしかありません。
「簡単な仕事が出目う」
「とは言え、私の身体では店の中の手伝いは出来ません。海の見回りとゴミ拾いなどでもしようかと思っておりますが」
「地味じゃが大事な仕事じゃの。燃やせるゴミであれば儂がやろう」
「ありがとうございます!!!!!」
「……今だけは耳が遠くなりたいもんじゃのう」

 海の家が盛況なだけに、お客も、そしてゴミも多く、更にマナーの悪い客は食べ残しを海に流している始末。その残飯につられてやってきたのは、招かれざる大きなお客でした。
「む! あれは……!」
 横歩きで海の中から現れた、見上げるほど巨大なカニ。その大きなハサミを目いっぱいに広げ人々を威嚇しています。
「まずいわね……あんなのがこっちに来たら店が壊されちゃうわよ!」
 カサブランカは他の店員たちを呼び集めました。
「こっちは全員で店を守るわ。大変だと思うけど、アナタたちで大ガニを追い払ってちょうだい」
「承知しました! アリザルフ殿、砂浜は動きづらいでしょうから、私の背に乗って下さい」
「おぉ、助かるよ。いやしかし、老人使いが荒いのう。……ま、焼きガニにしてやろうかの」
 武器を構えるレニアスの背によっこらせ、と乗りながら、アリザルフは帽子の奥でニヤリ、と笑ってみせました。

◇◆◇◆◇


 という訳で、レニアスさんが【背乗せ】でアリザルフおじいちゃんを乗せて戦う事に。

 なので【防御ロール】はレニアスさんに一任の扱いにします。何かその方がそれっぽいので!(?)


 お祭り的リプレイなので、特技を出し惜しみせずバンバン使っていくスタイルにします!

 さぁて、戦闘だーッ!!!!!



0ラウンド 

 レニアスさんの【突進攻撃】! 筋力点7→6

 その間に、アリザルフお爺ちゃんがレニアスさんの武器に【炎付与】! 魔術点6→5


1ラウンド 

 レニアス 【炎付与】された魔法の片手武器(剣/斬撃)で攻撃

 技量点2+初撃1+【突進攻撃】1+【炎付与】1ー【斬撃】1+🎲6→1

 クリティカル!!!! からのファンブル!!!!!


※【炎付与】によって攻撃特性が【炎】に変わってたので、斬撃によるマイナス修正いらなかったんですが、出目的にはあんまり関係ありませんでした(笑)

 アリザルフ 【炎球】を飛ばすぜ! ※カニさん大きいし海だし広い場所扱い

 魔術点5+🎲5=10 成功! 2倍以上なのでダメージ2点! 魔術点5→4


 ※【炎球】の呪文で、同じ敵に複数回のダメージを与えることはできません。(引用)

 愚かなの?(そうだよ)(2回目)

 ばちくそルール間違いしてますが、このままにしておきます……。
 アリザルフお爺ちゃんの【炎球】は【大炎球】って事でご容赦下さい……
 ※そんな特殊技能はないです


〈大ガニ〉 7→4


 レニアス 防御2回 技量点2+修正1+【突進攻撃】1+🎲5、3 成功2!


2ラウンド 

 レニアス 【蹄撃】! 筋力点6+【打撃】修正1+🎲3 成功 筋力点6→5

 アリザルフ もういっちょ【炎球】! 魔力点4+🎲5 成功 2倍以上なのでダメージ2点


〈大ガニ〉 4→1


 生命点の半分を下回ったので戦闘終了!


☆宝物(チップ) 

🎲2+1=3 🎲3+1=4 下限5枚の金貨


◇◆◇◆◇


「突撃します! しっかり掴まって!!」
「風が気持ち良いのう! さぁて、ちょいと力を授けてやろうかね」
 レニアスが大ガニ目掛けて砂浜を力強く駆けていきます。その背に掴まりつつ、アリザルフは煙草用のパイプを取り出すと、レニアスの剣へ一振りしました。すると、剣が炎に包まれます。
「おぉお! 我が剣が!!」
「あやつ、甲羅が硬いからのう。斬撃以外で攻撃すると良いじゃろう」
「おぉ、流石はアリザルフ殿! お知恵に感謝します!」
 レニアスは駆け抜けざま、炎を纏った剣を振り上げると、突撃の速度を乗せた一撃でもって、足の一本を見事に焼き切りました。しかし、追撃はハサミで弾かれてしまいます。
 アリザルフが放った炎の球は、馬上からでもしっかりと大ガニに当たって弾けます。海の生きものですから、炎のダメージがかなり大きかったのか、ふらりとよろめきました。駆けさるレニアスに向けてハサミを振り回しますが、彼の足の方が速く、一旦大ガニと距離を置きました。
「出来れば海の家から離して、海の方へ移動させたいもんじゃの。横歩きしか出来んやつじゃから、向きを変えさせれば……」
「なるほど! では、私の蹄で蹴り飛ばしてみましょう」
「おお、良い案じゃな。儂も助太刀しようかの」
 レニアスは再び駆け寄ると、ハサミを避けつつ、痛烈な後ろ蹴りを繰り出します。甲羅の硬さを物ともしない力強い一撃で、大ガニの身体の向きが90度変わりました。レニアスが海の家を守るように雄々しく陣取ると、仕上げとばかりにアリザルフが再び炎の魔法を浴びせます。大ガニは負けを悟ったのか、泡をブクブク出しながら海へと戻っていきました。
 やや荒れてしまった砂浜に、光るものをいくつか見つけます。金貨が5枚ほど見つかりました。
「逃げたお客の落とし物かもしれませんね。海の家で預かって頂きましょう!!」
「それくらい、お礼代わりに貰っておけば良いと思うがのう」
「なりません!!!!!」
「お前さんのお陰で耳が遠くなりそうだわい……」

◇◆◇◆◇


 という訳でカニ退治は無事に終了!

 身近でレニアスさんのクソデカボイスを聞き続けたアリザルフお爺ちゃんの鼓膜も終了していそうですが……それ以外は(?)無事に終わりました!👏


◇◆◇◆◇



◆お手伝い2組目 マスター&セレーナ 🎲21 〈キンキンに冷えたエール〉


 リプレイ時空だとまだ辿り着けてないんですが、セレーナちゃんとミダスおじさんは〈天駆ける狗〉亭を拠点にして、〈還らずの森〉近辺の吸血鬼退治をしております。なのでこの二人も顔見知りです。ディジベラちゃんとは特に仲良しだと思います。その辺りの小話も書きたいところです。


 セレーナちゃんは【血の呪い】でアンデッド化してる(リプレイ『呪われた血族の牙城』参照)ので、日射しが少し苦手設定です。マスターがそれを見越して、店の中のお手伝いをすることにした……とかだとスマート紳士で良いですね。

 因みに、マスターは『納涼!ナリク夏祭り』でディジベラちゃんがお土産に買ってきてくれたユカタを着ている事にしています。似合うんだなこのマスターは……(?)


◇◆◇◆◇


「この番号は……セレーナとだな。宜しく頼む」
「わ、マスターと一緒でしたか。心強いです、よろしくお願いしますね」
 〈天駆ける狗〉亭のマスターと、吸血鬼殺しの娘セレーナは、軽く会釈をしました。
「今の時間は特に日射しがキツイだろう。店の中での仕事を探してみよう」
「お気遣いありがとうございます。……あ、確かにお店、忙しそうですね」
 セレーナの肌は死人のように白いのです。それもその筈、吸血鬼から【血の呪い】を受け、生きながらにして血が凍り付いてしまい、ほぼアンデッド化しているのでした。それを知るマスターは事情を慮り、店内で出来る仕事を見つけました。店員の女性二人が大量のエールを次々運んでいます。注文はひっきりなしで大変そうです。
 どこかおっとりした上品な女性と、眼鏡をかけたメイドらしき女性でした。どうやら彼女たちは主従関係のようです。
「お嬢様、そのようなものは全てこの私が」
「いいえ。私も今日は店員ですもの。このくらいやらなくちゃ」
「あの、私たちも手伝います!」
 セレーナが手伝いを申し出ると、主の女性はやわらかに微笑んだ。
「ありがとう。助かるわ」

◇◆◇◆◇


 マスターは補助という事で、セレーナちゃんにやって頂きますか!


 セレーナ 技量点1+🎲4 成功!


◇◆◇◆◇


「ご注文のエール2つです、お待たせしました!」
 お盆に載せたグラスを危なげなく運ぶセレーナ。注文もしっかり合っています。
「空いたグラスを下げさせてもらうよ。洗うのもやっておこう」
 宿経営者かつ、酒場で慣れているマスターは店内全体を見渡し、臨機応変に動きます。
「ふふ、頼もしいわね」
「私も洗うのを手伝います。お嬢様、すぐに戻って参りますので」
 主の女性が楽しそうに微笑みつつエールを運び、メイドの女性がマスターを補助するべく厨房に向かいました。セレーナは注文を受け付けます。
「えぇと、エール3つですね、承りました!」
 分担したり、お互いに助け合ったりしたお陰で、お客たちは満足げに帰っていきました。客足が引いたので、セレーナとマスターは一息つきます。
「ふぅ……接客って、初めてでしたけど、何とかなりました」
「初めてとは思えない程に上出来だったよ。うちも忙しい時に手伝ってもらいたいくらいだ。依頼料は勿論出すよ」
「やってみたいです、ぜひ!」
「……まぁ、ミダスがいる時じゃないと、許可は出ないだろうけれどね」
「? いつもミダスさんと一緒にいますので、大丈夫かと……?」
「はは、そうだね」

◇◆◇◆◇


 無自覚セレーナちゃん。

 因みに、マスターで筋力点で【筋力ロール】してみたら、見事にファンブルしてました。


 そんな気はしてたよ!!


 筋力点8点でやったらそりゃあり余り過ぎてぶちまけそうですわい。微妙にドジっ子属性が拭えなくなり始めました。セレーナちゃんでやっておいて正解でしたね。


 マスターにセレーナちゃんと同じ年ごろの娘がいるのもあって、この二人は親子的な雰囲気で安心感ありますね。


◇◆◇◆◇


(マスターは、ミダスさんといる時と安心感が似てる……けど、やっぱり違う。嗚呼、そうだ、お父さん……)
「……セレーナ。うちのディジーは、〈天駆ける狗〉亭に来る者は皆『家族』だと言うんだ。勿論、私もそんな風に思ってもらえれば嬉しいと思っているよ」
「『家族』……そっか。両親だけじゃなくて、増やしても良いんですね」
「血の繋がりだけが『家族』ではないからね。夫婦だって、血だけで言えば他人同士だ。けれども『家族』になることは出来る」
「確かに! 不思議ですね、『家族』って。……ディジベラさんがお姉さんで、マスターがお父さん……かな?」
「君たちを見てると、ディジーの方が年下に見えるけれどね」
「ふふ、一人っ子だったから、きょうだいが出来るなら嬉しいです」

◇◆◇◆◇


 みたいなやり取りもあったらいいな。

 マスターの圧倒的父性。

 セレーナちゃんは嬉しそうに微笑みつつも、ミダスおじさんを目線で探すのでした!


◇◆◇◆◇



◆お手伝い3組目 ガーちゃん&カッツ・オブシー 🎲22 〈あなたの物語〉


 ガーちゃんでお仕事決定。

 いやしかし、思わぬコンビになりました。片やオレ様系犬型悪魔ガーゴイル、片や末裔ルララ語(?)で話す魚人さん。ガーちゃんは猫では無いので美味しそう……という事にはならなさそうですが。

 できごとも絡めつつ、様子を見てみましょう。


◇◆◇◆◇



「これだけ店員がいりゃあ、俺様の出番も無さそうだな」
「ルララ~(そうでもないと思うが)」
 末裔カッツ・オブシーの言葉に、フン、と鼻を鳴らして、ガーゴイルのガー(本名はとても最高にカッコいいのですが、若かりし頃のマスター(と主にその妻ネロリムニ)に封じられた挙句、幼い頃のディジベラに名付けられてしまいました。とても屈辱です)は肩を竦めました。外からは運び屋ケンタウロスの雄叫びが聞こえてきたり、中ではマスターと常連の娘がエールを運ぶ手伝いをしています。
「多けりゃいいってもんじゃねぇ。導線とかもあるしな」
「ルラァ(そういうものか、成程)」
 ならば邪魔にならない所で待機するのが良いだろう、とガーは空きはじめた客席を見渡しました。店の片隅の席に、店員バッジを付けた……恐らく青年、がペンを片手に唸っています。
「お! サボってるやついるじゃねぇか! 俺様も見習ってやるぜ」
「サボりだって? 僕の本業はこっちだ」
「ルラ?(本業と言うと何なのだ?)」
「……何て?」
「本業は何か、って聞いてるぜ」
「末裔の言葉が分かるのか、お前……。というか見れば分かるだろう、作家だよ……というか改めて見ると凄い絵面だな。既にホラーの様相だ。お前たち、絶対ネタはあるだろう。話してみろ」

◇◆◇◆◇


 おそらくこの作家店員さんことキースさん、一人称僕ですが女性だそうで。ガーちゃんは多分気付いてないですが、カッツさんは気付いてると思われます。

 二人とも、色んな冒険はしておりますから、ネタは豊富かと!


 ガーちゃんは【幸運ロール】で!

 カザド・ディルノーで出くわした霊の話や、深層の闇深さを話してみましょう。


 ガー 技量点1+🎲1 ファンブル!!!!!


 お話下手そうですもんね(酷)


 カッツさんは、騎士道というか武士道というか、筋を通すみたいなところがあるので(?)こういう時は標準語で話してくれるでしょう。『幽霊屋敷の果実酒』でのできごと、『クトゥウルウの聖なる邪神殿』でのできごとを訥々と語ってくれます。

 幸運点キャラクターなので、幸運点で! 【深き祭壇】を作っているので1点減ってます。


 カッツ・オブシー 幸運点5+🎲3 成功!


 さっすがカッツさん! イケ魚! 幸運点5→4


☆宝物(チップ) 

カッツ・オブシーのみ 🎲2 🎲5枚の金貨を頂きました。


◇◆◇◆◇


「……それで、霊をバーン! とやってドーンだ! すげぇだろ!」
 ガーが身振り手振り羽振り交えて話しますが、要領を得ません。作家を名乗る店員は溜息をつきました。
「……はぁ。全くもって何にも分からん。次、末裔のお前……は、通訳が……」
 話を聞くのに、ガーの通訳を介さなければならないとなると、手間もかかるし時間もかかります。何より、先ほどのガーの説明っぷりでは、たとえ良いネタだったとしても半減しそうです。断ろうとした矢先、カッツは口を開きました。
「……怖い話を求めておるのか、レディよ。で、あれば、まずはとある幽霊屋敷の……」
「普通に喋れたのか!?」
「っていうかお前女か!?」
 カッツが標準語を話せた事に作家店員は驚き、カッツが標準語を話せる事にも作家店員が女性である事にもガーは驚きました。
「言ってなかったか?」
「あまり、得意ではないが……言ってなかったか?」
「言ってねぇだろ、聞いてもいねぇし」
 作家店員とカッツは首を傾げます。ガーがげんなりしながら呻きました。こいつらめ……!
「で、幽霊屋敷だったな。良いじゃないか、そういうのを求めていたんだ」
 そんなガーを放って、作家店員が嬉々としてカッツの話を促しました。訥々とした語り口で語られる冒険譚は作家店員を満足させたらしく、金貨5枚をカッツに渡すと用は済んだとばかりにノートに書きものを始めました。ガーが俺様には!? と凄んでも眼中にありません。物凄い集中力でした。
「くそっ、俺様を無視するとはいい度胸してるぜ。ま、頑張れよ~。しっかし、話せるんなら俺様の通訳要らなかったじゃねぇか」
「ルラ~(普段は此方の方が楽なのだ。お前が通訳してくれるから助かっていたぞ)」
「そうかよ。んじゃ、俺様にもチップの分け前くれるよな?」
「ルララ(いいえ。これは私が話した事への対価です。渡す事は出来ません)」
「おい! 急に何か他人行儀の口調やめろ!」
「ルラルラア~(いやはや、私は身の回りの理解者に恵まれているようだ)」
 ガーが怒るのをしり目に、カッツが楽しそうに(見えなくもない顔で)笑いました。

◇◆◇◆◇


 ちょっとキースさんまだ掴みきれてないので似非感凄いかもしれないです……。

 ガーちゃん&カッツさん、案外いいコンビになれそうかもしれない二人でした!

 口悪いんですがガーちゃん案外苦労人(悪魔)ツッコミ属性なのでね。


 さて、お次は中間イベント……できごと用の組み合わせとは別に選ばれた、栄えあるコンビは……!


◇◆◇◆◇



◆お手伝い4組目 中間イベント スノウスノウ&ドミニア 〈かき氷は大人気〉

出現数:🎲2+5=7名


 最近登場の王子様(ではない)スノウスノウさんと、巨人撃退で大活躍のドミニアちゃんコンビ。実はスノウスノウさん、お家柄や聖騎士の職業柄、【悪の種族】と戦う事が多い為、仲良くするのは内心困惑しています。あまり態度には出にくいのですが。

 まぁでもドミニアちゃんは【悪の種族】としてはマイルドタイプ(?)なので、多分何とかうまくやれそうな気はします。


◇◆◇◆◇


「た~いへん! お客様が途切れないわよ!」
「カサブランカさん! こっちも新しい注文です!」
 お昼時になり、客足も増えてきたのでカサブランカもアシュレイも、てんてこ舞いといった様子。店は大忙しです。
「悪いんだけど、かき氷の担当を代わってくれる? アタシは奥から材料を出してこないと!」
「これを削ればいいんだネ? 氷なんてお腹膨れないけど、人気なんだネ~」
「これだけ暑いと、氷菓も欲しくなるのだろうね。……ドミニア嬢、ここは協力して切り抜けよう」
「あはハ、くすぐったい呼び方! 呼び捨てでいいヨ」
「……では、ドミニア。参ろうか」

◇◆◇◆◇


 スノウスノウさんは『納涼!ナリク夏祭り』の際の浴衣姿になってます。流石に暑い中、鎧なのもアレなので。言うてドミニアちゃんとかは板金鎧なんですけど(笑)


 ドミニアちゃんが氷を削り、スノウスノウさんが接客&注文受付、シロップをかけたり……という分担になりますでしょうかね。




 え!?!?!??!?!??!(クソデカボイス)


 浴衣姿の男装の麗人に!?!?!?!?



「お待たせ致しました。ご注文は決まっているかな? 『エメラルド海シロップ』だね。君によくお似合いだ」


 とか……

 言われた過ぎるじゃん……!!!!!!!!!!!!


(自分の子のファンなので(?)何故か打ちのめされている)


「氷溶けちゃうかラ、早く済ませちゃオ~?」

 はいすみませんドミニアちゃん。




0ラウンド 

 流石にドミニアちゃんのスリングやスノウスノウさんのトレント弓ぶつけんぞ! は出来なさそうなのでここはなしで(笑)


1ラウンド 

 ドミニア 力いっぱい氷を削る! これ武器でやってる事にするね!?

 技量点1+両手1+初撃1+🎲2 成功


 スノウスノウ 爽やか笑顔で接客 技量点2+初撃1+🎲4 成功


お待ちのお客様7→5名


防御は接客担当スノウスノウさんが3回、ドミニアちゃんが2回で!


 ドミニア防御2回 技量点1+修正1+🎲3、2 成功2


 スノウスノウ 防御3回 実はPLが脳筋過ぎてあんまり使わない【全力防御】3回、いってみましょう!

 筋力点5+🎲4 成功

 筋力点4+🎲5 成功

 筋力点3+🎲5 成功

 筋力点3→2点


 お客様をパラソルの下に誘導したり、メニュー表を配ったり、みたいな感じですかね。爽やか笑顔も忘れない。完璧な接客!


2ラウンド 


 ドミニア 続けて氷を削る! 技量点1+両手1+🎲2 成功

 スノウスノウ 微笑みと共に接客 技量点2+🎲4 成功


お待ちのお客様5→3名


 今度はドミニアちゃん2回、スノウスノウさん1回にしましょう。


 ドミニア防御2回 技量点1+修正1+🎲6、3 クリティカル!成功! 素晴らしい!


 スノウスノウ 筋力点も2点なので、技量点で…… 技量点2+🎲3 成功


3ラウンド 

 ドミニア まだまだ削るヨ~! 技量点1+両手1+🎲5 成功

 スノウスノウ 誠実なお詫びと共に 技量点2+🎲1 ファンブル! お詫びはねつけられちゃったか!?


お待ちのお客様3→2名


 防御は1回ずつ!


 ドミニア防御 技量点1+修正1+🎲6 クリティカル! めちゃ元気!

 スノウスノウ 重ねてお詫び。オマケにフルーツとか如何ですか! 技量点2+🎲4 成功


4ラウンド 

 ドミニア あともうちょいだヨ~! 技量点1+両手1+🎲6!→6!→1 クリティカル!→クリティカル!ファンブル! 

 折角なので【連連続攻撃】2回! 🎲6、2 クリティカル!&成功

 筋力点6→4


 流石のドミニアちゃんの暴れまわりっぷり、流石だぜ……!!

 折角なのでスノウスノウさんもとびきりスマイルで 技量点2+🎲3 成功!


お待ちのお客様2→0名


 無事終了!


☆宝物(チップ) 

🎲1 金貨1枚😢



◇◆◇◆◇


「さぁてト、頑張りますカ~!」
 ドミニアが愛用の斧(消毒済み)で豪快に氷を削っていきます。それを華麗な器捌きで受け止めたスノウスノウは、注文に合わせて色とりどりのシロップをかけては笑顔と共に渡していきました。勿論、合間にお客をパラソルの下に誘導したり、メニュー表を渡したり、とフォローに余念がありません。
 とある子ども連れの女性がやってきました。母親であろう女性も子どもも、暑さでを顔を真っ赤にしておりました。女性は少しカリカリしながら、フルーツの盛られた皿を眺める子どもを急かします。
「かき氷一つ。味はどれにするか決めた?」
「ママの分は?」
「私はいいのよ。さ、早く決めて」
「えっと……じゃあ、まなつのオランジュシロップ……」
「えー? あなたの好きなの、赤色エルダーベリーじゃないの。そっちにしましょ」
「う、うん……」
「……それでは、赤色エルダーベリーシロップのかき氷、一つですね。少々お待ち下さい」
 スノウスノウは違和感に気付きましたが、にこやかな接客を続けました。しかし……。
「ちょっと! 先に注文したのはこっちよ! 早く持ってきて頂戴!」
 その女性が、注文が前後したのを怒り出しました。スノウスノウが「申し訳ございません、お客様。すぐに持ってまいります」と言っても聞く耳持たずです。
「……。ドミニア、少し多めに頼めるかい」
「だいじょーブ! 任せテ~!」
 ドミニアが削ったやや大盛の氷を載せた器の他に、小さな器とスプーン、そしてそこにはカットしたフルーツを載せて、スノウスノウは先程の親子に持っていきます。
「お客様、大変お待たせ致しました」
「いやだわ、今度は注文が違うじゃない! 私は一人分頼んだだけよ、この子のかき氷を……」
「お子様と分けて召し上がって頂ければと思いまして。フルーツはお待たせしたお詫びです。それに……」
「わ~! ママ、良かったね! ママ、オランジュの実、好きだよね!」
「う……うん、そうね」
「お子様はずっとかき氷ではなく、フルーツの方を見ていらっしゃいました。お味も、きっとお母様のお好きなものを食べて頂きたかったのかなと」
「あ……」
「うん、ママとね、いっしょに食べたかったの。ママも暑いだろうから……」
「もう、そんな事……」
 ないのに、と否定しつつ、女性は目に涙を浮かべて子どもを抱きしめました。
「……ごめんなさい。……その、離婚したばかりで、余裕がなくて……でも、子供には寂しい思いをさせたくなかったから」
「いいえ、謝らないで下さい。貴女が立派に母の務めを果たそうとしていたのはよく分かりますから。暑さも酷いですし、どうかお気になさらず。ゆっくり涼んでいって下さいね」
「……ありがとう」
「おにーさん、ありがとー!」
 子どもに手を振り返し、スノウスノウは改めて接客に戻ります。
 その間、ドミニアが大奮闘し、大斧で大きな氷を真っ二つ、そこからグルングルンと大斧を振り回して氷を削っていくので、見世物の如くに見物人が出来る程の盛況ぶりで、何とか乗り切ることができたのでした。
 かき氷とフルーツを食べ終わった後の親子は……顔色も、そして笑顔も戻っておりました。

「二人ともありがとう~! 助かったわぁ」
 例の親子から頂いたというチップ……金貨1枚をカサブランカから受け取ったドミニアは、それをスノウスノウに差し出しました。
「アハハ、チップこれだけカ~。でもスノウスノウ宛じゃないイ?」
「いや。君の頑張りの方が凄かっただろう。取っておいて欲しい」
「ン~。……あのサ、スノウスノウ、アタシの事、苦手でショ」
 ドミニアの突然の発言に、スノウスノウは一瞬目を瞬かせましたが、首を小さく横に振ります。
「……いや、そんな事はないよ。そう思わせてしまったのならすまない」
「聖騎士なんだシ、【悪の種族】とは折り合い悪いよネ。分かるから気にしないで大丈夫だヨ」
 スノウスノウの立場を慮り、苦手と思われていても相手を責める事をしない。ドミニアは【悪の種族】にしては妙に理知的に見えるのです。それがスノウスノウには不思議だったのでした。
「……ドミニア。君はだいぶ、今まで戦った事のあるオークと雰囲気が違うんだ。勿論良い意味でだよ。だから少し戸惑いがあったんだ。それが君を傷つけていたのなら……」
「ないなイ! アタシがそんなデリケートに見えル? それにアタシは誰もが将来の商売相手だかラ、大事にしてるだケ。自分の事しか考えてないヨ? アタシも気にしてないから、スノウスノウも気にしなイ! お互いこれで良しでショ?」
 ドミニアはあっけらかんと笑いながら、斧の水気をふき取りました。そう言われてしまったら、スノウスノウも笑うしかありません。
「……ふふ。そうか、ありがとう。私の事もスノウ、と呼んでくれ。改めて宜しく、ドミニア」
「じゃア、スノウって呼ぶネ~。『薬』が入用だったらいつでも準備するから、よろしくネ?」
「どちらかというと私はそれを取り締まる側だから、どうだろう。そう言えばこの前の祭りの『お土産』はどうだった?」
「あれネ! なかなか興味深かったヨ~、ディジーに感謝だネ。でもアタシならもう少し上手く出来そうかナ~」
「より良い調合がありそうなのかい?」
「売り方だヨ。目をつけられちゃったラ、商売上がったりだからネ~」
「成程。君は敵に回すと厄介そうだ」
「だから仲良くして欲しいナ~? これはスノウにあげるからサ!」
 ドミニアは握手代わりに金貨をスノウスノウの手に載せ、スノウスノウはそれを大事に握り込んだのでした。

◇◆◇◆◇


 という訳でチップ1枚はスノウスノウさんへ。【悪の種族】と交流することに苦手意識(討伐対象になる事が多い為)がありましたが、ドミニアちゃんのお陰で少し緩和したかもしれません。貰い物の金貨1枚で関係修復が出来る、ドミニアちゃんはやり手……!

 表立って仲良くは難しいかもしれませんが、友好的なビジネス関係(?)として上手くやっていけそうな気がします。

 この点、スノウスノウさんは誠実さもありながら、柔軟な所もありますね。外交官(想定)の父の影響かも?


 さて、中間イベントは終了!

 後半のお手伝いも頑張りましょう!


◇◆◇◆◇



◆お手伝い5組目 ノワリリウム&リュコ 🎲31 〈大ヤドカリ〉

出現数:🎲4+1=5体


 外のお仕事っぽいので直射日光ガンギマリ確定の為、ノワリリウム生命点7→6


 一番心配な組み合わせきた!!!!!


 ディジベラちゃんの年下幼馴染で、万年片思い中のヘタレ男子の獣使い・リュコくん。


 目も眩むような美しき夜の女王、『黒百合の淑女』と呼ばれる吸血鬼・ノワリリウム様。



 リュコくんの色んなものが危ぶまれる……!!!!!

 と、とは言え、まずは見守ってみましょう……!


◇◆◇◆◇


 割り箸で出来たくじを引くとき、リュコは強く念じていた。
(どうかディジーと一緒の組になりますように……!)
 そしてディジー……ディジベラと一緒に仕事をし、頼もしい所を見せて好感度アップ、仕事はさくっと片付けて、余暇はディジベラと浜辺でキャッキャウフフと追いかけっこなど……!
 そんな希望と妄想を胸に抱いていたリュコは、ディジベラと別の組になった事になった訳だが……己の不運を内心ちょっぴり嘆いていました。
(……プランAはダメだったか……でもプランB……仕事を早く終わらせてディジーの応援に行けば……!)
 そんなリュコの背後に、スッと音もなく現れたのは、この暑い中にもかかわらず黒いハットと黒いコートを肩に掛け、男性の貴族が着るようなスーツの出で立ちの美女でした。
「坊や、よろしく。フフ……私はノワリリウムという」
「よ、よろしくお願いします……ッ、リュコ、です」
(……! 気配が全くしなかった……綺麗な人だけど何か怖い……)
 びくりと身を竦めた彼を、小動物を見るような蛇か猛禽類めいた眼差しで、ノワリリウムは眺めています。じっとした目線から顔を逸らしながら、さて仕事はないか、と探してみます。何となく、屋内にいる方が身の危険を感じたのでリュコは外に出てみました。太陽の眩しさに一瞬目が眩みますが、徐々に慣れてくると、どこまでも広がる空の青さと、また違った海の深い青さ、そして白い砂浜のコントラストが、彼の目に焼き付くようでした。
(山とか森とか、囲まれた所で暮らしてるからかな……こんなに広い所だと何だか落ち着かない……)
 今日は相棒の、頼りになるオストリッチ山風も連れてきていません。ソワソワしながら、隠れられる岩場でも探したい所だったのですが、ふと目につくのは、砂浜に人の拳よりもやや大きいサイズの岩がごろごろと転がっていることでした。その幾つかはもぞもぞと動き出すので、もしや(ディジベラが誤って放してしまった事のある)転がる岩石か……!? と警戒していたのですが。
「ヤドカリだ、あれは」
「え……あ、ほんとだ……ですね」
 ノワリリウムに対して何となく敬語の方が良さそうだと思っているのですが、慣れていないリュコは変な話し方になってしまいます。フフ、とまた笑われて、リュコは気恥ずかしさに身を竦めました。気を取り直して念の為カサブランカに報告すると、 彼(いや、彼女と呼んだ方が良さそうな気がする、とリュコは思いました)も砂浜を眺めて溜息を一つ吐きました。
「あら~、集まってきちゃったのね。これがいると大ガニを呼んで危ないから、駆除しておいてって店長さんに言われてるのよ」
 カサブランカはアシュレイを呼び寄せ、愛用の鍬を構えました。何で鍬なんだろう、と一瞬不思議に思ったのですが、牧場手伝いのリュコとしては馴染みのある道具だったので親近感が持てました。
「あっちはアタシたちが片付けるから、アナタはそっちをお願いね!」
 ヤドカリは全部で10体ほど。カサブランカたちと協力して半分ずつであれば、すぐに終わるに違いありません。
「さて、陽射しがキツイがやるとするか。大ガニは先程アリザルフが遠ざけてくれたようだが、念の為にな」
「お姉さんは下がってて……俺が何とか……!」
「フフ、頼もしいことだ」

◇◆◇◆◇


 戦闘だーッ!

 レベルも2だから余裕余裕!(フラグ)

 一応、ノワリリウムさんは吸血鬼バレしないように、吸血鬼っぽい【特殊技能】はなしにしています。



0ラウンド 

 リュコ 砂嵐の大剣の効果で、砂を巻き上げる! 技量点2+修正1+🎲5 成功!

拙作『天駆ける狗のディナーは■ミの鍋』と合わせて使える宿オプション『天高く狗肥ゆる秋』でゲット出来る稀少な装備品です。マスターの若い時代に使っていた両手武器の愛剣の1つとしています。若い頃は武器収集がちょっとした趣味みたいなものだったので、〈天駆ける狗〉亭の倉庫には結構お宝が眠っている……という想定です。
1ラウンド目に使用した【黒風斬】も出典は同様。マスターが編み出した技の1つ。

1ラウンド 

 リュコ 【黒風斬】! 技量点2+両手1+初撃1+砂嵐1+🎲1 ファンブルう!

 筋力点5→4


ノワリリウム 傘槍で攻撃 技量点0+両手1+初撃1+砂嵐1+🎲1 ファンブル!

 【黒風斬】で起こした風向き良くなかった説!


防御はリュコくん3回、ノワリリウムさん2回で……!


リュコ 技量点2+🎲6、5、4 クリティカル! 成功2

ノワリリウム 技量点0+🎲2,1 成功、ファンブル! 生命点6→5


2ラウンド 

 リュコ おとなしく普通に攻撃 技量点2+両手1+🎲1 ファンブル!

 ノワリリウム 【怪力】使用 技量点0+両手1+修正1+🎲3 成功

 血液点6→5

大ヤドカリ5→4


防御は2回ずつ!


 リュコ 防御 技量点2+🎲5、4 成功2

 ノワリリウム 防御 技量点0+🎲1,2 ファンブル、成功

 生命点5→4


おっとぉ?? 本気出さないとまずいか……?

よし、ディジベラちゃんに応援してもらおう!

「リューくん! がんばって!」

「!!!!!!!!!」


3ラウンド 

 リュコ 応援されたからには!!!!!! 技量点2点+両手1+🎲4 やっと成功!

 ノワリリウム 青春だな、と笑いながら 技量点0+両手1+🎲5 成功

大ヤドカリ4→2


 半数を下回ったので戦闘終了!

 宝物はなしです。


◇◆◇◆◇


 リュコは〈天駆ける狗〉亭のマスターから譲り受けた、砂嵐の大剣で砂浜の砂を巻き上げながら風を起こしてけん制した……つもりでした。けれど、今回の相手は大ヤドカリです。彼らは驚いて、殻に籠もってしいました。躍起になって【黒風斬】で旋風と共に斬りつけようとしましたが、砂に足を取られ、あろうことか砂交じりの風はノワリリウムの方へ向かってしまいました。
「うわー! す、すみませ……!」
「ごほ、大ヤドカリ如きに全力を出し過ぎだ」
 リュコが起こした風に気を取られている間に、大ヤドカリたちは不意を突いてノワリリウムへ一撃、二撃を浴びせます。ノワリリウムは舌打ちしながら、大ヤドカリの一匹を掴むと、細腕からは考えられない程力強く、海の方へ放り投げました。ボチャン、という音すら聞こえない程遠くに水しぶきがあがります。
(な、何とかしないと……!)
 焦るあまり、剣を握る手が力み過ぎて殆ど動かない筈の大ヤドカリにすら攻撃が当たりません。これではマスターに認めてもらうどころか、呆れられてしまいます。たかがヤドカリ、されどヤドカリ。リュコには強いクリーチャーにすら思えてきました。……ところが不意に、リュコの耳に誰かの声が届きました。
「リューくん! がんばって!」
(ディジー……!!)
 ディジベラもどうやら、海辺で敵性生物と戦っているようでした。そんな中、リュコが苦戦している様を見て手を振ってくれています。嬉し過ぎる反面、余所見をしていたディジベラがピンチになるかもしれない、と思うと更に焦りそうになって……。
「坊や、一呼吸しろ」
「へっ……?」
「体格としては良い戦士なのに、心がまだまだだな。落ち着けば何のことはない、敵にも満たぬ相手だぞ。……良い所を見せたいのだろう?」
 リュコはノワリリウムに声を掛けられ、ハッとします。大ヤドカリは何なら、先ほどのノワリリウムのように掴んで投げてしまった方が楽なくらい、動きも鈍いクリーチャーです。あまりに攻撃が当たらなさ過ぎて、実は手強い敵なのでは? と思ってしまっていた自分をリュコは恥じました。
「……すいません。助言、ありがとう、です……!」
 己の未熟を恥じながら、リュコは今度こそ、大ヤドカリ目掛けて下から掬い上げるように斬りつけました。キィン、と硬質な音を響かせて、大ヤドカリはボールのように飛んでいきます。ノワリリウムがもう一体を傘槍で突くと、残りの大ヤドカリはワラワラと海へ逃げていきました。
 リュコはノワリリウムに駆け寄ると、頭を下げます。
「はぁはぁ……すいません、怪我、大丈夫ですか……?」
「良いもの見せてもらった、構わない」
 ダメージを受けてはいますが、ノワリリウムは満足そうに笑っているので、リュコには不思議でした。トドメを刺した大ヤドカリから傘槍の穂先を引き抜く彼女をしり目に、大ヤドカリに目を向けます。確か、あまり美味しくないとの事ですが、大ヤドカリも食べられる、と聞いた事がありました。ただ、1つ1つの身が小さいので、糧にならないかもしれませんが……。
「? そ、そですか……これ、もう少し倒せてれば食料にもなったんすけど……」
「そうか。でも私は要らない。……もう少し育ったら、良い『栄養』になりそうだな、フフフ」
「?? もうこんなに大きいのに……?」
(どうして俺の方を見て舌なめずりしてるのかなこの人……!?)
 やっぱり近づかない方が良さそう、と思ったリュコなのでした。

◇◆◇◆◇


 レベル2でも侮れない、それがローグライクハーフ……!

 もしかしたらノワリリウム様に獲物認定されてしまったかもしれないね!!(ノワリリウム様は自分のものにならなさそうな相手程燃え上がるという難儀なタイプです)

 がんばれリュコくん! 負けるなリュコくん!



◇◆◇◆◇


◆お手伝い6組目 スノウスノウ&おどる剣 🎲22→23 〈白皿危機一髪!〉

(偶数ルー、奇数ケーンでダイスロール 🎲6→ルー)


 聖騎士スノウスノウさんと、おどる剣というばっちりな組み合わせ。今回は氷属性のややクールなショタみある次男ルーくんがメインです。三男ケーンは、末っ子の筈なのに激渋な雷属性。炎属性の長兄オードは既に折れておりますが……その辺りはいずれ『炎の王墓』のリプレイで語るとしましょう。

 おどる剣は果たして食器を片付けられるのか!?


【器用ロール】

 スノウスノウ 技量点2+🎲2 成功!

 ルー 器用点6+🎲2 成功!


 二人とも出目的にはギリギリだった様子……!


◇◆◇◆◇


「ルー殿、どうぞよろしく頼みます。お皿を片付けておきましょう」
「うん、よろしく。僕、戦闘なら得意だけど、こういうお手伝いは役に立てるか分からないよ」
「そんな事はありませんよ。やってみましょう」
「うん、分かった」
 こちらは聖騎士スノウスノウと剣型ゴーレムのおどる剣・ルーのコンビ。先程のスノウスノウは表で緊急のかき氷づくり、裏では氷属性のルーが氷を作っていたのでした。ようやくお互い落ち着いたので、改めて仕事を探してみると、洗い終わったお皿が拭かれずにそのままなのを見つけ、それを片付けることにしました。ふわふわと空中に浮きながら、ルーも前向きに挑戦してみます。
 とは言え、手足を持たぬおどる剣には慣れないお仕事。お皿がツルリと滑って……!
「ハッ……!」
 スノウスノウが素早く浴衣の裾を捌いて皿の1つをキャッチしました。
 もう一つは……!
「えい……!」
 ルーが自らの氷属性の技で皿ごと凍らせました。ゴトリ、と氷の塊は床に落ちてしまいますが、皿自体は無事です。氷を溶かせば、問題ないでしょう。
「セーフよ! ふう」
 見守っていたカサブランカが額を拭う仕草を見せました。スノウスノウはこちらは大丈夫だとカサブランカに伝えるように手を振りました。
「良い技ですね、ルー殿」
「ありがとう……でもごめん、僕の不注意で」
「誰でも初めての事はあるものですよ。私だって、今もギリギリでしたから」
「スノウスノウは何でも出来そうなのに」
 彼……いえ、彼女はいつも冷静で、落ち着いている物腰です。初めての事すら器用にこなしてしまいそうな印象がありました。けれど、スノウスノウは少し寂し気に微笑みます。
「そんな事はありません。……そうであれば、親衛隊を亡くす事も無かったでしょうから」
 聖騎士は【善の種族】であれば、魂を呼び戻せる御業を持っています。しかし、それでも間に合わず、何人かの従者を亡くしてしまっていたのです。ルーはしょんぼりした様子で、頭を下げるように一度大きく上下しました。
「ごめん……」
「いいえ。貴方がた兄弟も、兄を亡くしてしまったとお聞きしました。さぞつらかったでしょう」
「うん……でもね、ガーと、カザド・ディルノーのドワーフたちが、オードを直してくれたんだ。もう話せないけど、でも一緒にいられるから、今は辛くない。……あのね。スノウスノウの親衛隊? の人もきっとそうだよ。目には見えないけど……きっとスノウスノウの傍にいる。僕だったらそうするから」
 ルーの言葉に、スノウスノウは柔らかく笑いました。ゴーレムと言えども、彼の『人らしさ』が何だか嬉しかったのです。恐らくは、彼ら兄弟を預かっている、〈天駆ける狗〉亭のマスターとディジベラ親子の影響もあるのでしょう。
「ふふ、ありがとう、ルー殿。貴方はお優しいですね」
「……そうかな。普通だよ。ガーの方が優しいよ。口は悪いし悪魔だけど」
「そうですか。ふふ、貴方がたも良い冒険をしたようですね」
「うん、また冒険したいな」

◇◆◇◆◇


 クールな少年系ルーくんと王子様スノウスノウさん。

 氷属性コンビとしても、喪った者がいる同士としても、かなり相性良さそうですね。

 ただ……。

 

◇◆◇◆◇


「おい! 俺様を差し置いて、何良い感じになってんだ!」
 作家店員と話し終えたらしいガーが、ズカズカとやってくると、ルーを呼びつけました。何だか怒っています。
「ガーも混ざる?」
「……いや、遠慮しとく。どっちかってぇと俺様の敵だろ、アイツ」
「怒ったり遠慮したり、変なの」
 ルーが斜めに体を傾げると、ケーンが分かっている、という雰囲気で頷きます。
「嫉妬、というものであろう」
「うるせー! 違うわ! お前らは俺様の相棒だろうが!」
 ガーが吠えるように言うと、何を言っているんだろう、とまた更に体を傾げながら、ルーはすぐに頷きます。
「うんそうだよ」
「……お、おう。分かってりゃいいんだよ」
「仲良き事は良きかな、だな」

◇◆◇◆◇


 と、まぁ。独占欲高めなオレ様悪魔ガーちゃんの相棒なので、期間限定でも許してくれなさそうですね(笑)


◇◆◇◆◇



◆お手伝い7組目 ディジベラ&ドミニア 🎲32 〈サメ〉


出現数:🎲1+1=2体


 何とまさかの豆の木コンビ再びです!

 この二人の組み合わせも楽しかったので、また絡みがあって嬉しいですね!


◇◆◇◆◇


「ドミニアさん、緊急のお仕事、おつかれさま!」
「アタシが役に立つ仕事でよかったヨ~。ディジーは何してたノ?」
「レニアスさんとアリザルフお爺ちゃんが退治した大ガニとか、大ヤドカリのスケッチとか……」
「ふんふン、ディジーは相変わらず上手だネ~」
「リュー君を応援したり……カッツさんの作った祭壇にお参りしたら来たサメを見てたわ」
「ン? 何テ?」
「サメを見てたわ。ほらアレ」
 流石のドミニアも思わず聞き返してしまいました。ディジベラの指差す方を見ると、確かにサメらしき背びれがこちらに向かってきているではありませんか!
「いや~っ! サメよ~!」
 悲鳴を上げたのは、勿論ディジベラでもなく、ドミニアでもなく、乙女たちよりも一番乙女らしいカサブランカでした。
 砂浜に上がった二匹のサメがびちびちと跳ねました。サメたちは陸地でその身をよじりながらも、得物を狙い鋭い牙をむき出しにしています。客が悲鳴を上げ逃げていき、その中には、かき氷を買いに来ていた親子もいました。今や顔面蒼白です。
「とにかくこのままじゃ営業できないわ! 退治するわよ!」
 カサブランカは武器を構えます。ドミニアとディジベラも続きました。
「スノウシャークの原種のサメね……活きが良いし牙も凄いわ! スケッチしたいところだけど、まずは安全確保が先ね。サメは血の匂いにつられて仲間が来るかもしれないから気を付けて!」
「了解、ところでサメって美味しイ?」
「貴方達、集中しなさーい!」

◇◆◇◆◇


0ラウンド 

 ディジベラ ラッパ銃撃ちます! 技量点1+🎲1 ファンブル! あらー! 動作不良!😢

 ドミニアちゃんは武器構えます。


1ラウンド 

 ディジベラ 武器持ち替え

 ドミニア 魔法の斧でドッカン! 技量点1+両手1+初撃1+🎲2 成功

サメ2→1


防御は……ドミニアちゃん!


 ドミニア 防御 技量点1+修正1+🎲5 成功!


 血の匂いに引き寄せられたかチェック 🎲3 セーフ!


2ラウンド 

 ディジベラ 鼻先が弱いと聞いたわ! 技量点1+初撃1+🎲3 成功!


 ドゴン! と杖で弱点を強打されたサメは逃げていきました。


☆宝物(チップ) 

🎲4 🎲1×1=1枚の金貨の価値の貝殻



 助けた女の子がくれた綺麗な貝殻とかにしましょうか。



◇◆◇◆◇


 ディジベラは、チャマイで手に入れた稀少なラッパ銃を構えて引き金を引こうとしました……が、上手く作動しません。
「あら! 海風で湿気ちゃったかしら……!?」
「ディジーは下がってテ~!」
 武器を持ち替えるディジベラの前に出たドミニアは、本来の使い方で斧を振り下ろし、サメを一体倒しました。残ったサメはドミニアに噛みつこうとしますが、ドミニアは斧でガードしてみせます。その隙に母の形見の杖を構えたディジベラが、サメの鼻先にめいいっぱいの一撃をかましてやりました。サメはひるんだ様子で、海へと帰っていきます。
「ディジー、すごいネ!」
「ドミニアさんも流石だったわ。サメの弱点はそこって聞いたの。本当だったのね」
 ドミニアが斬ったサメから血は流れていましたが、それにつられて他のサメが来る気配も無さそうで、浜辺の平和は戻ってきたようでした。
「よし、もう怖いサメはいなくなったわ! 皆、安心して楽しんでいって!」
 ディジベラが明るい声で告げると、恐る恐るではありますが、お客も浜辺に戻ってきました。
「ありがとう、あなたたちのお陰で、楽しめているわ」
「かき氷のおねーさんと、元気なおねーさん、ありがとう! これ、ママと見つけたの。お礼にあげる!」
「あら、良いの? ありがとう、すっごく綺麗な宝物ね!」
 例の女性とその子どもがやってきて、礼代わりに白い貝殻をくれました。ディジベラは大事に両手で受け取ると、笑顔で親子を見送ります。
「ア~、その辺に落ちてる貝殻だネ~。金貨1枚で売れればいいくらいノ……」
「ううん。ドミニアさんと一緒に戦ったお陰で、あの子が見つけた宝物を貰えたの。こんな付加価値がついたら、手放せないわ。だって、思い出の品だもの」
「……アタシは損得で考えちゃうからナ~」
「それもドミニアさんらしさだわ。あとそうだ、貝殻って海の音がするのよ」
「エ~?」
 ドミニアが半信半疑で、ディジベラが差し出した貝殻に耳を当ててみると、確かに遠くで鳴るさざ波のような音が聞こえてくるような気がしました。
「ふ~ン、海を持ち帰れるなら、悪くないカ~」
「ふふ、そうね!」
 二人は暫く、浜辺で遊びだしたお客たちを眺めながら、他愛無い話をしたのでした。

◇◆◇◆◇


 ラッパ銃、昆虫都市の時は比較的調子良かったんですよ! 信じてください!

 いやしかし、安定安心の女子コンビでした。

 海なし県育ちな所為か妙に海が好きで(泳いだり、というよりはひろーい! でかーい! という開放感とか波の音が好き)、貝殻で音を聞いては海に思いを馳せたりする幼少期でした。まぁ実際は自分の鼓動とか?の音らしいのですが……何か浪漫ありますじゃん?

 きっとアランツァにならば本当に海の音が聞こえる貝殻もあるかもしれませんね。

 今でも貝殻自体も好きですし、貝殻モチーフのものも好きですね~。


 ディジベラちゃんにまた宝物が増えた一幕でした!

 さて残るコンビは……?


◇◆◇◆◇


◆お手伝い8組目 フィーダ&ミダス 🎲23→11〈お客さま〉


出現数:🎲3+1=4体


 『四猫亭の幽霊』リプレイの主人公、魔猫のフィーダさまと、『呪われた血族の牙城』の暗殺者ミダスおじさんという、何とも絶妙なコンビ!

 フィーダさまはチョロ……寛大なので、何とかなりそうな気もしますが、さて!


 運命の【反応表】ロール! ここはフィーダさまで! 🎲6 【敵対的】 

フィーダさまあああああああ!?


◇◆◇◆◇


 『銀月のフィーダ』との通り名もある灰色の魔猫フィーダと、吸血鬼殺しセレーナの同行者ミダスは、海の家の受付に立っておりました。食事が必要なら海の家の中に案内したり、パラソルや遊具の貸し出しをしたり、迷子や落とし物対応なども行う、総合的な場所です。
 そこに看板猫というには少し大きなフィーダと、むっすりと無表情に近いミダス。思わずミダスはぽつりとつぶやきます。
「……不適切過ぎやしないか」
『あら、わたくしは接客に経験アリですわよ。貴方こそ、どうなんですの?』
「紛れ込む為には何でもやったさ」
『じゃあ、適切って事ですわよね』
「接客の基本は笑顔よ! スマイル!」
 カサブランカはウインクして見せました。ですが、ミダスの表情は変わりません。
「んも~、それじゃお客さんも逃げちゃうわよ?」
「カサブランカさん、お客さんです」
「は~い! いらっしゃ~い」
 暫くはカサブランカが持ち前の愛嬌と機転の良さでカバーしているので何とかなっておりました。しかし、混んでくると流石のカサブランカも手が回らなくなってきて……。
「おい、何でおれの接客が獣と男なんだ! 若い娘に代われ!」
 フィーダとミダスが担当する事になった男性客一行が、チェンジを要求してきました。フィーダは既にご立腹です。
『何ですって! レディであるわたくしを、よりにもよって獣扱いとは……お客とは呼べないようですわね!』
「何だと!? この暑い中、せっかう来てやったってのに……お客様は神様だろうが!」
『わたくしだって「かみさま」ですわよ! 神同士であれば平等ですわ!!』
「表に出ろ! 分からせてやる!」
『上等ですわ~! 「かみさま」の格の違いを見せてやりますわよ!』
 売り言葉に買い言葉で喧嘩が成立してしまいました。後ろで静観していたミダスがまた呟きます。
「……ほんとに経験者か?」
『何ですって~!? 貴方もムッツリしてるからいちゃもんつけられてるんじゃないですの!?』
「ムッツリだと意味合いが違うぞ『かみさま』。……兎に角、切り抜けるぞ」

◇◆◇◆◇


 という訳で、残念ながら猫派じゃなさそうなお客様に接客(戦闘)致しましょう!


0ラウンド 

 ミダスさんの【奇襲】&【速攻】は出来そうにないので残念!


1ラウンド  主人公側後攻


 防御は2回ずつ!


フィーダ 防御 技量点2+🎲1、3 ファンブル! 成功1 

【素早い反射】! 🎲1 ファンブルw 器用点6→5 生命点5→4


ミダス 防御 技量点2+🎲5、2 成功2


反撃!


 フィーダ これはもう【目もあてられぬ激怒】ですわぁ……

 技量点2+🎲6 クリティカルw→🎲1 ファンブルw

 【狩りの本能】も使ってもらいますか…… 技量点2+🎲3 成功

器用点5→3


 ミダス 冷静に対処 技量点2+🎲3 成功

厄介なお客さま4→1


 半数を下回ったので退散しました!

 1ラウンドだけでクリファン乱舞、めちゃフィーダさまって感じ!


☆宝物(チップ) 

🎲4 🎲5×5=25枚の価値の貝殻 めちゃたっか!

 フィーダさまは持てないので、ミダスさんが代わりに預かりました。

 フィーダさまはキレイなもの好きですので、コレクションになさるかもしれませんね。



◇◆◇◆◇


 表に出るや否や、フィーダとミダスが構える前に、お客様一行は殴り掛かってきました。フィーダは獣らしい反射力で切り抜けようとしたのですが、砂地では思うように跳ねる事が出来ず、珍しく一撃を受けてしまいました。一方ミダスは、場慣れしているのか冷静に避けています。
「……此奴ら、ただの客じゃないな。暴力に慣れている」
『野蛮な者の多いこと!』
 野蛮な者相手には相応の荒々しさで、フィーダは暴れまわります。主犯格の男を爪でしっかり切り裂かれ、ミダスの一撃も受けたお客様一行は、一気に弱腰になりました。
「くそ! こんな所二度と来るか!」
『フン! 「お客様は『かみさま』」というのは接客側の台詞! もう来なくて良いですわよ~!』
 フシャー! としっかり威嚇して、彼らがスタコラサッサと逃げるのを確認し、漸く辺りに静けさが戻りました。カサブランカが二人の傍にやってきます。
「助かったわフィーダ、ミダス。あの連中、数日前から若い女の子の店員にちょっかいかけたり、妨害してきたりして、厄介極まりなかったの。何より酷いのは……」
 カサブランカがキラッキラの目の端に、涙を浮かべる。
「アタシという看板乙女に、目もくれないどころか目を合わせてもくれないのよ~!! 恥じらってるのかしら!?」
 いや違うだろう、と一瞬思ったミダスだったが、口と表情には出さなかった。触れない方が良い話題というものがある。暗殺者は空気を読むのも肝心なのだ。
『それは酷すぎますわね。カサブランカはそこらの娘より、よっぽど上品な立ち振る舞いですし、お肌も綺麗で艶めいていて、手入れの行き届いた髪もフワッフワ、服装や装飾品もオシャレで洗練されているというのに』
「やだッ、そんなに褒めてくれるなんて! フィーダ、アナタって最高の魔猫よ~!!」
 他のお客がチップ代わりに、と置いていった、どうやら稀少価値のある貝殻を譲ってもらったフィーダは、漸く機嫌を直したのでした。

 ◇◆◇◆◇


 片や「四猫亭の幽霊」、片や暗殺者……闇に紛れて活躍するという、立場的にはちょこっと似ている二人なのですが、相性はというと(笑)

 何だかんだ世話焼きフィーダさまと、皮肉屋ながら仕事はきっちりこなすミダスおじなので、やりとりしてる内に何だかんだ信頼関係は結ばれる……かもしれません。


 今回もフィーダさまと一緒に過ごせなかった狂信者信者ケモノコビット・フィエゥ

「アタシというものがありニャがら、フィーダさまあああああああニャアアアアアアア!」


◇◆◇◆◇


『? 何だか悪寒が致しますわね……』
「慣れない接客で心労でも祟ったんじゃないか」
『だーから、経験者ですわよ! でも、暫く休ませて頂きますわ』
(……カサブランカに、ミルクでも持ってってもらうよう頼んでおくか)

◇◆◇◆◇


 さてやりとりも出目も賑やかだったできごとも終わりまして、最終イベントの二人は……こちら!


◇◆◇◆◇


◆お手伝い9組目 最終イベント ディジベラ&セレーナ 〈YAKISOBA〉 


やっぱり『持ってるな』と感じる看板娘、ディジベラちゃん&看板娘その2のセレーナちゃん!

 太陽と月コンビと勝手に呼んでます。年齢的にはディジベラちゃんの方が上ですが、セレーナちゃんの方が大人びてます。


 ってオワー!?


 フレーバー称号【料理音痴】のディジベラちゃんに料理任せて大丈夫か!?!?!?!??


 セレーナちゃんは何となく、自炊出来そうなので得意そうなイメージなんですが。

 思い出してしまったので、ディジベラちゃんは【攻撃ロール】(YAKISOBAを焼く)に修正ー1つけましょっか(笑)


 いや笑い事じゃないかもしれないんですがね!?


◇◆◇◆◇


 海の家の人気メニュー、YAKISOBA。
 熱気立ち上る鉄板があります。この上で豪快に材料を炒めたものです。
「東の方ではこういう麺料理を、ヤキ……ソバ? っていうらしいですよ。やっぱり海辺で出されるみたいです。それが元なんでしょうか?」
 読書好きで物知りなアシュレイが言いました。物珍しそうに傍へ来て見学する客も幾人かいます。
「暑い中これをやるのはアタシでも結構堪えるんだけど……頑張ってちょうだいね!」
 カサブランカに肩を叩かれ、エール運びが終わったセレーナと、サメ退治を終えたディジベラは元気よく頷きました。
「キョウの料理はユニークなものが多いわね! この前、ロング・ナリクのリエンス領で行われた夏祭りに行ってきたんだけど、クラーケン焼きっていうのを頂いたわ」
「クラーケン……槍イカの姿焼きみたいな感じですか?」
「それが全然違うの! 見た目はまんまるで可愛くって、中に小さく切ったクラーケンの足が入ってるの。……流石に父さんでも、専用の器具が無いと作れなさそうだなって言ってたわ。あ、カツオブシっていう、魚の身を乾燥させて削ったものも載せてあったわ」
「ルラ?(呼びましたか?)」
「(カッツさん、どうしたんでしょう?)そしてこれはヤキソバ……ソバを焼いてるんでしょうか。この麺がソバ?」
「まぁきっとそうよ。ふふ、最近全然父さんが厨房に立たせてくれないから、腕がなるわね!」
「私も頑張りますね!」
「一緒に頑張りましょ、セレーナ!」
「はい!」

◇◆◇◆◇


 さぁてどうなる! 頑張って焼きましょう!


0ラウンドは相変わらず割愛。


1ラウンド 

 ディジベラ 焦がさぬようにわっしょい! 技量点1ー修正1+🎲3 失敗

 セレーナ 海鮮は火が通りやすいですね 技量点1+🎲5 成功

YAKISOBA 8→7人前


 防御は1回ずつ!


 ディジベラ 砂漠エルフの父譲りで暑さへっちゃら! 技量点1+🎲2 失敗

 しかし火傷はする 生命点7→6


 セレーナ 火の扱いには慣れている(意味深) 技量点1+🎲5 成功


2ラウンド 

 ディジベラ 火傷は後で冷やしましょう 技量点1ー修正1+🎲3 失敗

 セレーナ 盛り付けはこんな感じかな? 技量点1+🎲1 ファンブル! べしゃあ!


 ディジベラ防御 汗をぬぐう 技量点1+🎲4 成功

 セレーナ防御 YAKISOBA、奥が深い 技量点1+🎲4 成功


3ラウンド 

 ディジベラ お焦げもご愛敬! 技量点1ー修正1+🎲6→3 クリティカル!失敗

 セレーナ 野菜はしんなりしてきたら 技量点1+🎲4 成功

YAKISOBA 7→5人前


 ディジベラ 何だかコツが分かってきた気がするわ! 防御 技量点1+🎲6 クリティカル!

 セレーナ ふぅ、と一息 技量点1+🎲6 クリティカル!


4ラウンド 

 ディジベラ ソースはこれくらい? 技量点1ー修正1+🎲1 ファンブル! やっべーぞ!

 セレーナ ソバを足しましょう!! 技量点1+🎲4 成功 何とか軌道修正に成功!

YAKISOBA 5→4人前


 ディジベラ防御 少し水を飲みましょう 技量点1+🎲3 成功

 セレーナ 防御 同じく水をこくり……少し、喉の『渇き』を感じつつ。

 技量点1+🎲6 クリティカル!


5ラウンド 

 ディジベラ ぜーんぶ焼くわよ! 技量点1ー修正1+🎲4 成功!

 セレーナ その分適量のソースを! 技量点1+🎲1 ファンブル! 逆に少なすぎ!?

YAKISOBA 4→3人前


 半分を下回ったので戦闘終了!


 見かねたマスターとミダスおじが助太刀とかかな?

 末裔カッツ・オブシーが持参したカツオブシを散らして、美味しさアップ!

 


☆宝物(チップ) 

🎲5+2=7 魔法のチップ表! 🎲〈タッジーマッジー〉

 【アンデッド】に効果ありのハーブの束ですって! これは……これからのセレーナちゃんに持ってて貰……いや、セレーナちゃん自身も辛そうかも!?

 ミダスおじに代理で持っててもらいますか。

「俺は荷物持ちじゃないんだが……」



◇◆◇◆◇



 何故か自信満々そうなディジベラが、まずは調理器具(ヘラと呼ぶそうですbyアシュレイ)を握りました。
「火加減は大事だし、焦がさない方が良いわよね! ってアッツーい!」
 ディジベラはガシャガシャとかき混ぜながら、ひっくり返そうとして……見事に失敗しました。具材が飛び散るついでに、キャベチ菜の葉っぱが腕に落ち、まぁまぁの火傷を負ってしまいました。
「大丈夫ですか……!?」
「大丈夫! 少しビックリしただけよ」
「火傷になってますから、後で冷やしましょう」
 飛び散った具材を丁寧にかき集めながら、セレーナは海鮮の火の通りやすさに感心しています。
「少し火加減を抑えても良いかもしれないですね。やっておきます」
「セレーナは慣れているわね」
「まぁ、火はよく使いますから……」
 彼女は吸血鬼殺し。吸血鬼を倒した後、そこから動物の姿で逃げ出そうとする魂を焼き払わなければ、吸血鬼は復活してしまうのです。不意に本業の事を思い出しながら盛り付けをした所為か、十字架めいた形になっていました。慌てて盛り直します。
「ふぅ、暑さには慣れてるつもりだけど、なかなかね」
 ディジベラが額の汗を拭いながら笑いました。何故かとても楽しそうです。セレーナは少し不思議に思いました。
「ディジベラさん、それでも楽しそうですね」
「楽しいわ! こんなに大勢で海に来た事もなかったし、休みと言えども結局働いてるのはちょっと笑えちゃう。……でも、誰かの役に立てるなら、私はそっちの方が性に合ってるのかも」
「ふふ、ディジベラさんらしいですね」
「そう? それにこのYAKISOBAを見てたら、何だか私たちみたいだなって」
「え?」
「この槍イカとかハードシュリンプは海のものでしょ? キャベチ菜とかポロネギは陸のものね。ソバ自体も恐らく。色んな出自のものが、一緒になっていて、それでいて美味しい調和を保ってるの。ね?」
「なるほど……YAKISOBA、奥が深いですね……」
「なーんて語ってたらちょっと焦がしちゃったわ!?」
「お焦げもきっと、私たちの一部ですよ」
「ふふ、そういう事にしましょ!」
 二人は和やかに語り合いつつ、手は休めずにおりました。ディジベラの言うように、海の幸と陸の幸が混然一体となったYAKISOBAが、お客の笑顔を生み出しています。それは何だか嬉しい事のように、セレーナは思いました。
「何だかコツが分かってきた気がするわ……!」
 ディジベラの目が輝きます。何となく嫌な予感を覚えながら、セレーナは何があっても対処出来るように一旦止まりました。
「ソースはこれくらい! ……あら? 真っ黒になっちゃったわ?」
「わー! ソバを足しましょう!」
闇神への供え物か、と言わんばかりに真っ黒に染まってしまったところに、ソバを投入し、何とか通常よりやや濃いくらいには戻すことができました。一息入れる為に用意してあった硝子瓶を水を一口。
「あ~、美味しい! これ、シュワシュワしていて爽やかで良いわね」
「先程、黒ずくめの方がそっと置いていってくれてましたね……店員さんでしょうか」
「カサブランカさんに後で聞いてみましょ。お礼はちゃんと言いたいものね。セレーナも飲んでみて!」
「はい。……ん、美味しい……」
 【血の呪い】によってアンデッドになっているセレーナは、今のところ飲食が出来る……のですが、時折『渇き』を覚えるようになっていました。けれど、それを認めては『人間』とは言えなくなってしまうでしょう。喉を通るサイダーの泡と共に、そっと飲み干しました。
「よーっし! もうちょっとだし、全部焼いちゃいましょ!」
 ディジベラが豪快に、具材を全て投入してしまいました。慌ててセレーナはソースを入れましたが、やや薄味になってしまったようです。それに、具材とソバが多い事で、なかなか思うように混ぜる事が出来ません。そこへ、娘二人の危機を察知したマスターとミダス、鉄板焼きの経験があるらしきカッツ・オブシーが現れました。
「ディジー、今回のYAKISOBAは七色に光ったりしてないか……!?」
「見ての通りよ、パパ。私だってちゃんと出来るのよ。今回は具材が全部準備してあって、焼くだけだったし!」
「……セレーナ、代わろう」
「ミダスさん! ありがとうございます、じゃあ私は盛り付けを頑張りますね」
「ルラ~(これにも鰹節が合いますよ)」
「わ! 美味しそうね!」
 頼もしい助っ人が来た事で、無事にYAKISOBAも完売する事ができたのでした。


◇◆◇◆◇



◆夏休みは、まだ続く。


「みんな、お疲れ様! カンパ~イ!」
 カサブランカの音頭で冷えたエールの杯をそれぞれに掲げ、夜の海の家はお疲れ様会の会場となっていました。
「いや~、よく働いたわね。アシュレイもすっごく頑張ってたわ」
「そ、そうですか……? え、えへ……」
 アシュレイは照れ笑いしていました。ディジベラたちも健闘を称え合います。

「パパはセレーナと一緒だったのね。セレーナ、頑張り屋さんだからうちのお手伝いもして欲しいわ」
「丁度、そんな話をしたんだ。ディジベラがそう言うなら、今度彼女の時間が許す時に依頼してみようか」
「良いわね! その日の売り上げから出す、だと変動してしまうから、時間に対して払う方が適切ね」
 ディジベラとマスター親子は漸く二人で話す事が出来ました。どうやらセレーナに本格的に宿での手伝いを頼む事にしたようです。そこへ、リュコがおずおずと声を掛けてきました。
「デ、ディジー、マスター、お疲れ様、です」
「リュコ、お疲れ。……お前はノワリリウムとだったか。大丈夫だったか?」
「はい、何とか……?」
「リューくん、あの後、大丈夫だった?」
「うん。応援ありがとう。ディジーのお陰で何とかなったよ」
「それなら良かったわ。あのね、ラッパ銃が壊れちゃったみたいなの。だからチャマイに戻ったら修理に行こうと思うんだけど、リューくんもついてきてくれる?」
「う、うん!」
 海では殆ど一緒に過ごす事は叶わなかったリュコですが、その後のディジベラとの約束を取り付けられたので、それだけで嬉しくなってしまったのでした。

「ミダスさん、お疲れ様でした。我がまま言って付き合って下さったのに、結局依頼をしている形になってごめんなさい」
「構わん。それにこれくらい我がままにも入らない。……まぁ、たまには悪くはなかろう。お前はどうだった、セレーナ」
「とても楽しかったです! 上手く出来たかは分かりませんけど……」
「……そうか」
 ニコニコと今日の出来事を話すセレーナの話に、耳を傾けるミダス。彼はセレーナがいずれ吸血鬼を倒し【血の呪い】を解いた後、平和な生活に戻るのを願っていました。今回の経験がその一助になればいい、と。【血の呪い】を解くまでの同行依頼を受けたミダスですが、その後は自分はどうするか、までは彼自身もまだ決めかねていたのでした。

『やれやれ、結局バカンスらしい事は出来ませんでしたわね』
「でも銀月のレディは満足そうだね」
『いずれ信者になる者たちが楽しそうでしたから、今回はヨシと致しますわ。騎士様はどうでしたの?』
「私も楽しかったよ。思わぬ友も増えた。良い想い出になりそうだ」
『あら、まだ過去にするには早いんでなくて?』
 フィーダはベンチに寝そべりつつ、満足そうに尻尾をゆったり揺らしていました。厄介なお客を追い返した後は、猫好きなお客がひっきりなし訪れ、フィーダを褒めそやしたのです。悪くない気分でした。
 スノウスノウはドミニア、おどる剣のルー、その後はケーンとガーとも友好的に交流をしたようです。【悪の種族】のオーク、ドミニアと打ち解けた事で、悪魔であるガーとも偏見なく話す事が出来たのです。スノウスノウにとっては、自分の世界を広げる一日になったのでした。

「アリザルフ。日射しにやられてはいまいな?」
「火に長けた魔術師じゃぞ。これくらいどうという事も無いわい。そっくりお返しするぞ。……というか、お前の方が弱ってるではないか」
「下等生物にじゃれつかれただけだ。その内に回復する」
「……なんじゃ、『栄養補給』はもう要らぬか、それとも他の餌でも見つけたか」
「おや、嫉妬か、珍しい。自ら望むなど」
「嫉妬でもないし望んでおらんわ!」
「フフ、であれば話が早い」
「待て待て、ここではやるな馬鹿者!」
 ノワリリウムが妖しく笑って牙をちらつかせ始めましたが、アリザルフは何とか止める事に成功したようです。緋色の魔術師と吸血鬼がどうしてそのような関係に至ったのか……はまた別のお話。

「お腹減ったヨ~」
「よく働きましたからな。それにしても、ドミニア殿が何も食べずにここまでいられるなんて珍しいですな」
「エ? アタシは落ちてたヤドカリとサメも食べたヨ。美味しくなかったけド」
「拾い食いはいけない!!!!!!!!」
「うわうるサ! だって腐ってないシ? まぁサメはちょっと臭みあったけド。ヤドカリは食べられるものだって聞いたシ?」
「だからといって……」
「だっテ、サメは退治しないといけないし、死体を放置してたら他のサメが来ちゃうかもだシ、それならうまく調理して食べちゃった方がお得じゃなイ?」
「とは言え美味しくなかったのだろう?」
「そこはマスターの知恵を借りてサ。あの臭みが無くなれば、肉質は締まってるから美味しく出来るとは思うんだよネ~」
「ドミニア殿の商才には恐れ入る……が! 拾い食いについてはしっかり言及させて頂く!!」
 レニアスの説教が始まりましたが、ドミニアはどこ吹く風です。商魂逞しい彼女は新たなビジネスを考えているのかもしれません。きっと何だかんだ言っても、レニアスは仕事熱心なので、付き合うのでしょう。

「は~働いたぜ~善行したぜ~」
「ガー、他の店員さんと話してただけじゃない?」
「そうだな。ルーは氷を作ったり手伝いをしたり、働いていたと思うが」
 ガーが自分の肩を揉みながら言うので、ルーとケーンは呆れたようにふわふわ浮いています。
「その後、厄介な客が来ないように、って番犬代わりにされたんだぞ。それから来なかったんだから立派に働いてるだろが」
「ルララ~(彫像の振りして寝ていたぞ)」
 そこにカッツが加わりました。どうやらガーの味方はいない様子です。
「まだ〈天駆ける狗〉亭のシュテルンの方が番犬しっかりしてるよ」
「んだとぉ!? ワン公に負ける訳ねーだろ、俺様だぞ!?」
「犬と張り合おうとする時点で、余程だと思うがな」
「ルラ~(まぁ、皆お疲れ様だったな)」
 カッツがガーの肩をぽんと叩きます。ルーが不意に、海の方を見つめてぽつりと呟きました。
「うん。……楽しかった。また来れたらいいな、皆と」
 その少し寂しげな様子に、ガーが溜息を吐きつつも堂々と言います。
「……ハァ、仕方ねぇな。来年も来るんだよ、……誰一人、欠けずにな」
「むしろ増やせばいいのでは?」
「ルラァ♪(良い案だ。私も次は遊人を誘おう)」
「……うん!」
 ガーとケーン、カッツの言葉に、ルーは嬉しそうに頷くのでした。

 それぞれの団らんがひと段落した頃、カサブランカが皆を集めました。
「さて。今日の報酬を店長さんから預かっているわ。確認してみましょ」
 小さな布袋をそれぞれ受け取り、中を確かめます。
「…………金貨、五枚」
「えっとね、流石にこんなに来るとは思ってなかったみたいなの。だからね、二人につき五枚で許して欲しいって」
「まぁ、私たちも依頼料については先に聞いてなかったわ。殆ど軽いお手伝いみたいな気持ちだったし」
 ディジベラとしては貰えるだけありがたい事だと思いました。周りを見まわすと不服そうな顔をする者、なぜかほっとしたような顔の者、なんにも考えてなさそうな顔の者など様々でした。
「ま、まあ、冒険と違って危険は少なかったし? チップも受け取ってるし? こんなものなのかしらね……」
 この場のリーダーとしてカサブランカがそれとなくフォローを入れます。その横でアシュレイが、店員の分として残されていたYAKISOBA(※ディジベラとセレーナの手伝い後の、マスターとミダス+カッツ作)を恐る恐る半分、興味半分な様子で口に運びました。
「……んっ」
「アシュレイ? どうしたの?」
「これ……えっと、鉄板焼きの麺料理。すごくおいしいですよ。みなさんもいかがですか?」
「じゃあ食べられる人で分けましょう!」
 ディジベラがてきぱきと皿に盛っていき、そこにカッツがまた鰹節をまぶしました。実はディジベラは焼くばかりでまだ食べていなかったのでした。口に運んでみると、ソースの香ばしさ、海鮮の旨味とがあわさって、自分で調理したものながら最高に美味しく感じます。
「おいしーい!」
「……今はこの場を楽しみましょっか。ね!」
「えぇ!」
 カサブランカがディジベラや他の者たちの杯へエールを注ぐ。二度目の乾杯の音頭は誰かが取って、杯の触れ合う音が響き、笑い声は絶えません。どうやら宴はまだまだ続きそうなのでした。

◇◆◇◆◇



 めでたしめでたし!


 という事で、主人公14(正しくは15)名で行く『冒険者と海の家』リプレイ、これにておしまいです!


 まぁ見ての通りなのですが、


 とても楽しかったです!!!!!(クソデカボイス)


 リプレイ書くのはちょい大変でしたけどね……!(笑)(そりゃそう)

 とは言え、自分でも思わぬキャラの絡みや関係性ができたので、楽しい試みになったかなと思います!


 恐らくサイダーをくれるネイトさんに出会えなかったのがちょっと悔しかったので、ちょっと最終イベントの一部で差し入れして頂きました。サイダーの君。


 もう少しカサブランカさん達とも良い感じに交流出来たら良かったのですが、まだまだ知らない方が多かったのでふんわり程度になりました。無念……!


 アシュレイさん&ディジベラちゃんで本好きコンビだとか、キースさん&スノウスノウさんの見た目性別分からん組(?)とか、ネイトさん&ミダスおじさんでネイトさんを同業者だと思うミダスおじさんだとか、アニスさん&フィーダさまのお上品コンビとか、オレガノさん&ミダスおじさんの寡黙辛辣コンビ(?)だとか、共通点は色々あるので見てみたかったんですが……またいずれ!(?)


 素敵シナリオを作って下さり、また『ローグライクハーフの夏』を主宰して下さった月さんに沢山の感謝を込めて!

 遊ばせて頂いてありがとうございました~!


 最後に一言。


 カサブランカさん一行(農協メンバー)はいいぞ!


 

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