四猫亭の幽霊:6話目~魔猫、友を得る
- 管理人 天狗ろむ
- 5月14日
- 読了時間: 7分
更新日:15 時間前
前回のあらすじ
最終前イベントにて、評議員の1人「愛らしきメルルーサ」さんの票を無事獲得しました。演奏会の約束も取りつけました。フィーダさまの魅力があればなんてことはありませんでしたね!
さて、第1回目の冒険、最終イベントは、最重要な票……無くてはならない、クリア条件に必須な相手に会いに参ります。
◇できごと9 最終イベント 「ドーレン評議長」
◆◆◆◆+◆
「〈四猫亭〉には武力めいた存在はいないと思っていたのだがな!」
双頭のトカゲ人の、目元に傷のある荒々しい顔立ちの方が口を開き、忌々し気に怒鳴りたてる。モノクルを掛けた知的な光を宿した眼差しの方は、鋭く二人を睨んだ。
「幽霊のように現れたかと思えば……〈四猫亭〉に魔猫か。流石のわしでもそれは想像つかなんだぞ」
「貴方が評議会の意見を統一した事は知れていますわ。……心変わりなさるおつもりは?」
「抜かせ!」
ドーレンは片手で剣を、もう片方で魔術書を開く。平和的な解決は一旦途絶えたようだ。
『どうやら一度分からせてやらねばなりませんわね』
「分かると思うけど手強いわ。気を引き締めていきましょう」
話を聞いてくれないようであれば、致し方ない。フィーダは姿勢を低くする。
『わたくしの爪、とくと味わいなさいませ!』
◆◆◆◆+◆
と言う訳で話し合い(と書いて戦闘と読む)だーッ!!!
ドーレン評議長、レベル4と易しめながら、武力も知力も備えております。
0ラウンドから激しい戦いが予測されますが、フィーダさまと〈ウッタ〉さんがんばれー!!
◆0ラウンド
〈ウッタ〉 【氷槍】⇒成功 魔術点3⇒2 ドーレン 生命点7⇒5
ドーレン 【氷槍】2回
フィーダ 【対魔法ロール】 成功
〈ウッタ〉 【対魔法ロール】 失敗 生命点7⇒5
【氷槍】の交差する戦場!
フィーダさまは華麗な避けっぷり、ですが〈ウッタ〉さんがー!!
◆1ラウンド
フィーダ 【目もあてられぬ激怒】使用 成功(クリティカル扱い)⇒クリティカル!⇒クリティカル!?⇒成功
ドーレン生命点5⇒1
〈ウッタ〉が降伏を呼びかけ、戦闘終了……!
〈ウッタ〉さんが傷つけられて、フィーダさまが本当に目もあてられぬ激怒っぷりを見せつけてくれました……!!
危うくドーレン評議長を亡き者にするところでしたが、間一髪!
◆◆◆◆+◆
〈ウッタ〉が呪文を唱えると、辺りの空気がぐんと冷えて、2本の氷の槍が現れた。彼女の視線にも似たその鋭い槍は、どちらもドーレンの肩を貫く。しかし、ドーレンは動揺せずに魔術書を読み上げる。氷の槍が4本!
フィーダは軽い身のこなしで躱してみせたが、呪文を唱えていた〈ウッタ〉は一歩遅れた。二本の槍が、彼女の華奢な体がガクリと頽れる。
『〈ウッタ〉!!』
フィーダは体中の血が沸騰するかのような怒りを覚えた。
彼女は命の恩人である。〈ウッタ〉の静かな雰囲気は、フィーダの好むところであった。居心地が良いのだ。つかず離れず、でも傍にいる。そのお陰で、傷ついていたフィーダはまた立てる事が出来たのだ。
『フシャアアアアアア!』
あまりにも獣めいていて、普段は隠している少しばかり恥ずかしい部分。
『かみさま』と崇められて、彼らが思い描く『かみさま』に近づけるよう、身を正してきた。
でも、なりふり構ってなどいられない。
自分を崇める存在が、傍にいる存在がいなければ、フィーダは『かみさま』ではいられないのだから。
その存在を脅かす敵なれば。
滅するのみ。
「ぐあああああ!?」
爪を振るう。振るう…振るう! 振るう!!
フィーダに出来るのは、たったそれだけだ。
それでも、トカゲ人の鱗を裂き、肉を刻む。
血の臭いが濃くなる。目の前の敵は既に、トカゲの癖に虫の息だ。あと一度でも切り裂けば、命が終わりを告げる。呆気ないものだ……。
「……フィーダ!」
『!』
肩を押さえた〈ウッタ〉が、声を張り上げる。はっとして、フィーダは我に返った。
(わたくしは、今、どんな顔をして、〈ウッタ〉を見れば良いのだろう)
フィーダの動きが止まったのを見て、〈ウッタ〉はドーレンの方に視線を向けた。
「……ドーレン評議長。どうか降伏を。でなければ、貴方の命を奪う他ありませんわ」
極めて冷静な〈ウッタ〉の声が静かに響くのを、フィーダは聞いていた。ドーレンは荒い息遣いのまま、目を閉じると、降参とばかりに剣と魔術書を放り投げる。
「……わしの負けだ。こんな獣に負けるとは……だが、それも一興」
『……獣では、ありませんわ』
かみさまだ、と続けようとしたけれど、言葉には出来なかった。未だに荒ぶる気を抑えるのに必死で、否定するだけで精一杯なフィーダを、冷たいトカゲの眼差しが見下ろしてくる。
「ハ、獣以外の何者でも無かろうに」
ドーレンに蔑むように嗤われる。勝負には勝った筈なのに、フィーダはひどく惨めな気分になった。でも、これで重要な票を手に入れられたのだ。喜ばなくては。いや、それよりも〈ウッタ〉の手当が先だ。ぐるぐると、手に負えない感情が嵐のようにフィーダを苛む。
けれど、〈ウッタ〉を振り返るのが何よりも今怖くなって、フィーダの尾は下がってしまった。彼女も、ドーレンと同じような顔をしていたら、それとも恐怖に凍えていたら……フィーダはきっと、この街を去りたくなってしまう。
「フィーダは我が『友』。獣ではありませんわ」
〈ウッタ〉が力強く言い切るので、フィーダは思わず振り向いた。
彼女は微笑んでいる。獣じみたフィーダを見ても、こちらに怯える様子は一切なかった。
彼女の態度は変わらぬまま、優しい。それがどんなにか、フィーダを救ったことか。
「あら、どうしたのフィーダ。さっきは格好良かったのに、今は子猫みたいな顔をして」
『な……んでもないですわ。別に、嫌われたかと思ってなんて』
「そう。……ありがとう、フィーダ」
『お礼はいいから、手当なさい!』
自分の怪我なら舐めて治すのだが、人間相手にはまずいだろう。フィーダには早く早く、と〈ウッタ〉を急かす事くらいしか出来ない。〈ウッタ〉はくすぐったそうにしながら、何とか応急手当をする。
「わしにも頼めるか?」
どっかりと座ったドーレンが、評議長らしい尊大な態度で頼んでくるものだから、フィーダはひと睨みしてやった。〈ウッタ〉のお陰で調子を取り戻したので、もう惨めな気持ちも見当たらない。
『……わたくしが舐めて差し上げても宜しくてよ?』
「トドメになりそうだ、いい、さっさと帰れ」
最後まで嫌な相手だこと! と思いつつ、もう用はないのだから撤退すべきだろう。〈ウッタ〉はクスっと笑ったあと、フィーダに支えられつつ立ち上がった。
「さぁ、帰りましょう。〈四猫亭〉へ」
『わたくしの背に乗る? 今なら許して差し上げますわ』
「光栄だけど、遠慮しておくわ。傷に響きそうだから」
『!! なら早く、嗚呼でも、ゆっくり、けれど急いで帰りますわよ!』
「言っている事が滅茶苦茶だわ、ふふ」
二匹の〈猫〉は大仕事を終え、帰路につく。
期日まではまだ時間があるが、〈ゴールドアクス卿〉、〈愛らしきメルルーサ〉からの2票と、最重要な〈ドーレン評議長〉の1票を獲得したのだ。
「もう全員の票を獲得して、満場一致にしてしまおうかしら?」
『それが良いですわ。猫に逆らう犬どもなど、完膚なきまでに叩きのめすのみですわよ』
「あら、強気。いいわね」
〈ウッタ〉の軽口に、フィーダが目をすがめて唸る。その様子を頼もしく眺めながら、〈ウッタ〉はくすくすと笑った。
◆◆◆◆+◆
と、いう訳でフィーダさまの1回目の冒険、達成です!!わーい!!👏
書いている内に、フィーダさまの、尊大そうでいて、その実不安でいっぱいだったりする部分が垣間見えてきて、可愛い『かみさま』だなぁと感じてきました。
獣の部分と理性の部分のバランスだとか、民無くして国はなしというか、信者無くして神はなし、というか?? 伝わります??
従者がいないと何も持ち物が持てない辺りとか…、まぁ四つ足で歩く猫さまですから勿論それはそうなのですが。精神的には従者に依存がありそうだなとも思えて。勿論、本人(本猫)としては、自分が従えているおつもりなんでしょうがね。
不思議と、従者が傷ついたり脱落すると、クリティカル連発して戦場を制圧してくれるのです。従者の為に【目もあてられぬ激怒】をする、従者思いの心優しいかみさまだなぁと、出目から教えてもらう事も多々あるので、これだからローグライクハーフはやめられないぜ!!!
リプレイを書いている内に設定が生えてくるというか、愛着が湧いてきたタイプの主人公・フィーダさまの2回目の冒険以降も、どうぞ応援宜しくお願いいたします!
次回からの冒険は、相棒を〈ウッタ〉さんから交代して、他の「猫」さんに同行してもらいます。誰になるかもお楽しみに~!
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