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四猫亭の幽霊:9話目~魔猫、理解に苦しむ

更新日:6月13日

 

 前回のあらすじ

 

 下水ワニを追い立てるのに時間がかかり、【悪臭】の染みついてしまった哀れなフィーダさま。飛翔騎士にも盗みを疑われたりと、結構散々です。

 今回は〈四猫亭〉に戻ったあとの、中間イベントから始まります。




◇できごと4 中間イベント 放火犯  


 

◆◆◆◆+◆



 〈四猫亭〉に帰り、湯を浴びてさっぱりした夜。
 うとうとしていたフィーダは何となく目を覚ました。ヒゲがざわついて、何だか少し嫌な予感がする。
『〈ユッサ〉。起きて、何か感じませんこと?』
「ん~? レフィナ、まだ一緒に寝てようよぉ……」
『誰よその女。寝ぼけていないでしゃきっとなさい』

【魔術ロール】
 フィーダ 成功
〈ユッサ〉 成功

 〈四猫亭〉の外に人の気配と、石を打ち合わせるような硬質な音がする。フィーダと〈ユッサ〉は目配せしあって、宿の外へと飛び出す。何者かの影が、いつの間にか積み上げていたわらの山に火をつけようとしていた。
『おやめなさい、卑怯者!』
「ちょっと! 私たちの宿に放火なんていい度胸ね!」
「……ちっ」

◆1ラウンド
 フィーダ攻撃 成功 
〈ユッサ〉攻撃 成功 放火犯5⇒3 逃走

 フィーダと〈ユッサ〉が攻撃を仕掛けるが、手傷を負いながらも放火犯は逃げていく。
「待ちなさーい!」
〈ユッサ〉がメイスを頭上に掲げながら後を追おうとするが、フィーダは呼び止めた。
『……ネズミ一匹、逃したところで痛くもかゆくもないですわ。放火を防げた事の方が大事よ』
「まぁ、そうね。情報の1つや2つ、教えてもらいたかったところだけど」
 唇を尖らせながらも〈ユッサ〉は諦めてメイスを下ろした。
 そんな二人の騒ぎを聞きつけて、〈メイシア〉や〈カゲガクレ〉も降りてくる。また戻ってこないとは限らない。念の為、わらの山を片付けておこう、と3人でわらの束を運び出した。

 ◆◆◆◆+◆


 1ラウンドで放火犯の生命点を半分以下に出来れば、情報ゲット出来たりしたのですが、今回は逃げられてしまいました!

 これに続いて、できごと5枚目もやってしまいましょう。


◆◆◆◆+◆


◇できごと5 出目🎲56→61 黒犬亭の用心棒 



「おいおい、〈四猫亭〉さんよ。深夜に騒がれたらお客様がお困りだろうよ」
 騒ぎを聞きつけたのか、それとも先程逃げた放火犯が呼び出したのか、黒犬めいた顔の獣人が難癖をつけてきた。大柄な体に鋲のついた革鎧を身に纏い、肩に担いだ大きな戦槌を揺らしながら、目を細めてフィーダたちを煽る。
「誰の所為だと……!」
『言っても無駄ですわ、〈ユッサ〉。犬どもが聞く耳を持つ事なんてありはしません』
「言ってくれるな、デカ猫さんよ。アンタの盛り声も煩くて敵わねぇと苦情は聞いてるぜ?」
『はァーッ!? わたくしそのような下品な声など出していませんわよ!?』
 もう絶対切り刻む、と怒りに瞳を燃やすフィーダに、先程の戦闘で不完全燃焼気味だった〈ユッサ〉は笑みを湛えてメイスを担いだ。
「大きいだけで、品の無い武器ね。私のメイスの方が可愛いわ」
「その品の無い武器にボコボコにされるアンタらも、相当品が無いって事になるぜ。……俺はスキロス、とある店の雇われ傭兵だ。覚えて逝きな」
 ニヤリと牙を見せて笑った猟犬は、大きな戦槌を振り上げた。

◆◆◆◆+◆


 戦闘だーッ!!

 すみません、スキロスさん好きすぎてだいぶキャラを盛ってしまっています。

 いやだって犬獣人傭兵キャッホー! ってなっちゃって……

 フィーダ「あなた実は〈黒犬亭〉の手先なのではなくて?」

 すみませんすみません〈四猫亭〉の味方ですう!



◆0ラウンド 

 スキロス 歩道に戦槌を振り下ろす 

【器用ロール】 フィーダ 成功

       〈ユッサ〉  失敗


◆1ラウンド 

 フィーダ【目も当てられぬ激怒】 成功(クリティカル扱い)⇒失敗 器用点4⇒3

 スキロス7⇒6 

 〈ユッサ〉 動けず 


 フィーダ 防御 成功

〈ユッサ〉 防御 クリティカル!


◆2ラウンド 

 フィーダ 攻撃 成功 スキロス6⇒5 

〈ユッサ〉 魔法のメイスの攻撃 ファンブル! 


 フィーダ 防御 クリティカル!

 〈ユッサ〉 防御 成功


◆3ラウンド 

 フィーダ 攻撃 成功

 〈ユッサ〉 攻撃 成功 スキロス5⇒3 


 生命点半分以下になったので戦闘終了


☆宝物表 :6 下限金貨30枚の宝石大



【幸運ロール】

 フィーダ 失敗 

 〈ユッサ〉幸運点で判定 クリティカル! 幸運点5⇒4


 手強いながらもなんとか勝てました! ヨシ!



 ◆◆◆◆+◆


「おらァッ!」
 気合の声と共に、大きく振り降ろされたスキロスの戦槌が歩道を割る。その地震じみた衝撃を、フィーダは軽く飛んで躱したが、〈ユッサ〉は躱しきれずによろめいて転んでしまった。
「いったぁい、ほんと、品が無いったら!」
「品だけで生き残れるようなら良かったのにな」
 〈ユッサ〉が狙われてはまずい!
 誰かを守る為には、品や知性などをかなぐり捨てなければならない時もある。フィーダは獣じみた声をあげながら、スキロスに飛び掛かった。一撃は食らわせたが、二撃目は戦槌で振り払われる。大振りだから動きは読みやすいが、破壊力は先程の歩道を見れば一目瞭然。食らえば骨の一つや二つは折れてしまうだろう。転んだ〈ユッサ〉目掛けて、スキロスが再び戦槌を振り下ろす。転がるように避けた〈ユッサ〉は攻撃に転じようとしたが、メイスが上手く握れない。
「可愛い武器が泣いてるぞ」
「泣いてないわよ! 喜んでるわよ!」
 口の減らない犬だこと。〈ユッサ〉と言い合っているスキロスの脇腹に、また一撃浴びせる。ブォン、と戦槌が振り回されるが、くるんと回りながら飛びすさって華麗に回避してみせる。そんな鈍重な武器では、銀月のフィーダを捕らえる事は出来ない。〈ユッサ〉の近くに降り立つと、彼女を叱咤する。
『〈ユッサ〉。敵に翻弄されるだなんて、いつも翻弄する側の貴女らしくないわね』
「本当そう。調子が狂うわ!」
『合わせて。もう一息ですわ』
 スキロスの攻撃は重いが、その分だけ隙も大きい。スキロスの攻撃を躱しきった後、二人は呼吸を合わせて畳みかける。フィーダの爪がスキロスの腕を裂き、〈ユッサ〉のメイスが脳天に振り下ろされた。
「おぉ……可愛い武器の割に、やるじゃないか。いい打撃だ」
 腕で〈ユッサ〉のメイスを受けた黒犬は、血を流しながらもニヤリと牙を見せた。降参だ、と両手を挙げて殺気を仕舞うスキロスに、まだ切り裂き足りないとフィーダは毛を逆立ててフゥフゥ鼻息を荒くする。
「落ち着けって、デカ猫さんよ。雇われの身だから一応体裁は整えておかんとな」
 埃を払って立ち上がると、戦槌を担いでスキロスは背を向ける。そして一度振り返り、〈ユッサ〉を見つめた。懐から宝石を取り出すと、〈ユッサ〉に放る。
「俺への依頼料だったがくれてやる。気に入ったぜ、嬢ちゃん。もし〈四猫亭〉が潰れたら俺の所に来な。歓迎する」
「私を口説くつもりならもっとマシなものにして。〈四猫亭〉は潰れないわ。……私が潰させない」
「そうか。……なら、応援代わりに一つ良い事を教えてやる」
 スキロスが口にした情報は、有用そうなものだった。お礼は言わないわよ、と小さく睨む〈ユッサ〉に、スキロスは肩を竦めて去っていく。
『はぁ……放火犯に用心棒。犬どもも小賢しい真似をしてきますわね』
「そうね……」
 〈ユッサ〉はスキロスに放られた宝石を両手で大事そうに持って、瞳を潤ませている。
『こら〈ユッサ〉、何うっとりしてらっしゃるの! あんな野蛮な野良犬、やめておきなさい!』
「だってあんなに真っすぐ褒められたりしたら、ちょっとはときめいてしまわない?」
『解せませんわ~!!』
 頭を抱えんばかりのフィーダの大きな嘆きの鳴き声で、多少寝不足になった者が出てしまったのだった。

◆◆◆◆+◆



 いやはやNPCが素敵すぎて……☺️

 この辺りからほんと書くのが楽しくなってますね!

 〈ユッサ〉さんが見境ない感じに惚れっぽくなっちゃったのはすみませんなんですが……フィーダさまが微妙に苦労人ならぬ苦労猫の様相を呈してきました。かみさまは大変!

 次回、二人を狙う更なる影が……!?

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