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『可愛いあの子に最高のプレゼントを』後編:勇者ベラのぼうけん!①


 つよくてやさしい勇者ベラの初めての冒険は、お友達の女の子へのお誕生日プレゼントを見つけること!

 森エリアと中間イベントにて、【プレゼント候補】を2つゲットしました。しかし、最高ランクの3には至りません。より良い【プレゼント候補】を見つけるべく、今度は街を探索してみることにしました。

 

 :マスター/GM

 :幼いディジベラ/PL 勇者ベラ/PC



🎁街のできごと1 🎲4、6⇒出目22 <狙われた宝石店>



「勇者ベラは宝石店の前を通りがかったよ。宝石は綺麗だけれど、女の子にプレゼントするにはふさわしいだろうかと迷っていると、見るからに怪しい黒ずくめの男たちが店に入っていくのが見えたね」
「いやなよかん!」
「いい勘だ。勇者ベラの予感の通り、すぐに大きな音が響く。『動くな! 妙な真似はするなよ! おい、袋に宝石を詰めろ! ありったけだ!』これは、宝石強盗だ!」
「わるいことはいけないんだよ! とめなくちゃ!」
「その通り。勇者ベラはすぐに店に飛び込んだ。さて、これは戦闘を避けられない。まずは強盗たちの出現数を決めよう。1d6+2だよ」
「うん。……🎲1+2で3人だけ!」
「この強盗たちは弱いクリーチャーだし、勇者ベラは0ラウンドに魔術……【気絶】の呪文を使えるね。この戦闘は、1ラウンドが終わっても強盗たちを全員倒しきれなかったら、人質を取られて逃げられてしまう。でも3人だけだから、1ラウンドにみんなで攻撃して倒しきることも不可能ではないだろう。さてどうするかい?」
「んー。【気絶】の魔法、使ってみたい!」
「じゃあやってみよう。【魔術ロール】は現在【魔術点】と1d6を足した合計が、敵レベル以上だったら成功だ。今回の場合だと敵のレベルは4だね」
「勇者ベラの魔術点は今、3点だから、1d6で1以上出せば成功だよね? 絶対成功だね?」
「それがだね、ディジー。出目1は決定的失敗……ファンブルと言って、たとえ目標値以上でも失敗になってしまうんだ。だから、2以上を出せば成功だね」
「そうなの!? じゃあ振ってみるまで分からないんだ……」
「逆に、6だったらクリティカルで決定的成功だ。合計が目標値に届いていなくても成功になるし、攻撃ロールだったら、もう一回振れるんだ」
「へぇ~! じゃあいっぱい6出したい!」
「はは、そうだね。じゃあ試してみよう」
「うん!」

0ラウンド目  勇者ベラ 【気絶】魔術点3+🎲3=6 成功

「魔術点が3で、出目が3……足したら6! 1じゃないからファンブルじゃないし、敵レベル4より上だから成功だよね!」
「そうだね。そして【気絶】の呪文は、敵レベルを2点上回るごとに更に1体の敵を眠らせることができる。今回は2体がスヤスヤ眠り始めたようだね」
「じゃああと1体をこらしめればいいんだ」
「魔術点は減らしておくんだよ」
「あっ、そうだった。1点減らして……2点! あと2回しか魔法使えないのかぁ」

勇者ベラ 魔術点3⇒2

「では、敵は0ラウンドに攻撃手段がないようだから、1ラウンド目に行こう。勇者ベラ一行から攻撃を仕掛けたから、先攻できるぞ」
「初めての戦いだけど、がんばる!」

1ラウンド目  勇者ベラの攻撃(軽い武器) 🎲2 失敗

「えっと……技量点2点、出目は2点だから、4点! 当たった!?」
「それがだね、勇者ベラの武器は軽い武器だ。攻撃ロールに-1点されてしまうんだよ」
「じゃあ、合計は3点? 失敗だぁ~」
「あとはお友達のウサギたちに頑張ってもらおう。兵士ウサギは技量点0点だから、出目勝負だ。4以上を出した子が一匹でもいれば、勇者ベラ一行の勝ちになるね」
「ウーちゃん、サーちゃん、ギーちゃん、ヘーちゃん、イーちゃん、シーちゃん、ウーくん、がんばれ~!」

兵士ウサギの攻撃 
ウーちゃん🎲5 成功 
サーちゃん🎲5 成功
ギーちゃん🎲3 失敗
ヘーちゃん🎲2 失敗
イーちゃん🎲1 ファンブル
シーちゃん🎲2 失敗
ウーくん🎲6⇒4 クリティカル、成功 

「(ウーちゃんの時点で既に勝敗はついていたんだが……ダイスを振るのは楽しいだろうからね)全部でクリティカル1、成功3か。かなり頑張ってくれたみたいだね」
「うん! おともだち、すごい!」
「じゃあ、強盗たちはみんなやっつけられたね。宝石店の店主が喜んでくれるよ『ありがとう、勇者ベラ! お礼に何か差し上げよう』」
「えっと。ここでもプレゼントは探せないかな。『困ったときはお互いさまだ。お礼だが、私は今おともだちへのおたんじょうびプレゼントを探しているんだ。お友達は小さい子だから、シンプルなものとか……もし何か良さそうなものがあれば、それをいただくことはできないか?』」
「『それはそれは! 勿論です、そうですね、プレゼントであれば……こちらのアクセサリーはいかがでしょう? そこまで値の張るものでもありませんから、きっと受け取ってくださると思いますよ』そう言って、【プレゼント候補】のアクセサリーをくれるだろう。ランク2のものだよ」
「それを貰う! でも【ラッピング】されたぬいぐるみも、このアクセサリーもランク2かぁ……なんとかランク3のプレゼントを見つけられたらいいな」
「そうだね。じゃあもう少し街を探索してみよう」
「うん!」


🎁街のできごと2 🎲6、2⇒出目21〈忍び寄る影〉



「勇者ベラが街を歩いていると……小さな影が近づいてくるね」
「なになに!?」
「目標値4の器用ロールをしてもらおう。失敗したら金目のものを取られてしまうよ」
「まだお買い物できるかもしれないのに、それは困る~! えっと器用ロールは器用点……?」
「勇者ベラは魔術点を選んでいるから、器用点は持っていないね。そういう時は、技術点に1d6を足すんだ。そして、勇者ベラは布鎧を着ているから、この器用ロールの時に+1点できるよ」
「じゃあ、1d6+3点ってことだよね。よし!」

勇者ベラ 器用ロール 🎲1 ファンブル!

「あっ……」
「出目1。ファンブルだ。失敗だね……」
「えーっ!」
「換金できる宝物は持っていないから、手持ちの金貨を半分失ってしまうね。端数切り上げか……勇者ベラは3枚持っているから、2枚とられてしまったよ」

勇者ベラ 金貨3⇒1枚

「もう、そんなひどいことするなんて!」
「そして、このクリーチャーは、最初の器用ロールに失敗すると【逃走】を選ぶようだね。素早く逃げられてしまった」
「どろぼうはうそつきの始まりなのよ~!」
「ディジー、逆かもしれないなぁ」


🎁街のできごと3 🎲1,6→出目12〈あなたが落としたものは〉




「勇者ベラがプンプンしながらまた街を歩いていると、茶髪の女性が何かを探すようにキョロキョロしているのが見えるね」
「さっきのどろぼうたちになにか盗まれちゃったのかな。『どうしたんですか、お嬢さん』」
「『あ、嗚呼、勇者ベラ、こんにちは。えと……どうも財布を落としてしまったみたいで。この辺りにあるんじゃないかと思って……』」
「『お金は大事だ!(強い口調) 私も探すのを手伝おう。手分けした方が見つかりやすいはずだからね』」
「『い、良いんですか? ありがとう、勇者ベラ』……という訳で、財布を探してみよう。これも器用ロール判定だ。目標値は5だよ」
娘「うっ……でも、さっきはファンブルだったからだけだもん、今度は大丈夫なはず!」

勇者ベラ 器用ロール 🎲5 成功!

「出目は……5! 技量点足さなくても成功だよね?」
「そうだね、お見事だ。じゃあ、金貨が入った小さな袋を見つけられるだろう。それを女性に見せれば、探していた財布だという。『ありがとうございます、勇者ベラ! 本当に助かりました……! これ、お礼になるかは分からないのですが……』そう言って「小さな猫の置物」をくれる。ランク1の【プレゼント候補】だ」
「うーーん、ランク3じゃなかったかぁ。でもありがたくもらう! これで、綺麗な花束、ノウサギさんぬいぐるみ、アクセサリー、小さな猫の置物……いろいろ贈り物ができそう!」
「そうだね。喜んでくれるといいんだが。……さぁ、次は最終イベントだ。これも固定イベントだから、ダイスは振らなくて良いよ」
「ドキドキ!」

寝子さんちのえりさんかな~? と思っていたら当たっていたみたいなので、こっそり微修正して、なるべくえりさんっぽくしてみました。えりさん可愛いよえりさん。
(でも寝子さんのnoteの資料眺めてたら覚醒えりさん出てきてハワワ…!となったりました(作文))



🎁できごと8 最終イベント:〈お客様、暴れるのはご遠慮ください〉



「プレゼントの候補を抱えて、勇者ベラは誕生日パーティ―の会場である女の子の家へとやってきました。何とか時間には間に合ったみたいだね。女の子は思った以上に人気者で、既に沢山の人やウサギが集まっていて、『お誕生日おめでとう!』『ありがとー!』とやりとりしながら、女の子にプレゼントを渡しているよ」
「乗り遅れちゃう! わたしもはやく渡さないと!」
「勇者ベラが女の子の元へ向かおうとした拍子に、会場の中の一人と軽くぶつかってしまった。『にゃにゃっ、ワタシのワインが~!!』その人が持っていた飲み物が零れて、近くにいたウサギ型ゴーレムにかかってしまう……」
「またまたいやなよかん!」
「勘がいいねディジー。ゴーレムは『ギガガ……ピガーッ!』と明らかに異常な音を立ててブルブル震えだした。『いかん、そいつは水をかぶると暴走するのだ!』とゴーレムの主人らしき男が叫んでいるよ」
「そんなもの持ち込まないでよ~!」
「本当にその通りだと思う(強い頷き)。とは言え、そのまま暴れさせたら誕生日パーティーどころではなくなってしまうね」
「とめなくちゃ! 勇者ベラは戦うよ!」
「その意気だ。戦闘を始めよう! 〈からくりウサギⅡ〉は強いクリーチャーだ。レベル4で、生命点が8点ある」
「えーっ、そんなに! 強いクリーチャーってことは……【気絶】は使えないね」
「そうだね。そもそもだけど【気絶】はゴーレムや植物には効かないんだ」
「そっか! ゴーレムも植物も眠らないもんね」
「そう……眠れないからね。さて……〈からくりウサギⅡ〉との戦いは、パーティーの参加者の皆を守りながら戦わなくてはならないから、【防御ロール】に-1点の修正がついてしまう」
「けが人を出す訳にはいかないし!」
「その通り。そして、ゴーレムはとても固く、【斬撃】での攻撃だと-1点、【打撃】の攻撃だと+1の修正がつくよ」
「じゃあ、勇者ベラが持ってるのは【打撃】の軽い武器だから……+1点と-1点で、0点?」
「そうなるね。ここでディジー、私にミスがあった。お友達たちの攻撃特性を決めていなかったね」
「うーん、【打撃】にしておきたいけど……ウサギさんってどう攻撃するの?」
「そうだね……ウサギ図鑑を見てみると、ノウサギは【打撃】のようだ。体当たりで攻撃するんだろうね。だから今回は【打撃】にしてしまおう」
「いいの? 勇者ベラたちがの方がつよそうになっちゃうけど……」
「パパがOKを出したからいいのさ。遊ぶからには楽しい方がいいだろう?」
「うん、ありがとうパパ!」

※天狗ろむはとてもうっかりものなので、今回のように、ミスに気づいて慌てて軌道修正したりすることがよくあります。今回は寝子さんの他のシナリオ冊子「ウワギノニワ ローグライクハーフ ミニシナリオ集」に載っている「ウサギ図鑑」を参考にしました。
 お子様とやっているときや、初心者のときは、甘めの裁定でも良いと思います。GM(一人プレイのときは自分)がOKならそれでヨシ!この辺りの自由さも、ローグライクハーフの魅力ですね。勿論敢えて厳しくいくのもまたヨシ。
パパは一人娘にとびきり甘いので、有利になるようにしています。

「どういたしまして。さぁ、0ラウンドから、〈からくりウサギⅡ〉は攻撃をしてくる。【ロケットうさぱんち】は2発だから……勇者ベラと、お友達の誰かが防御をしなくてはならない。攻撃回数が複数の時は、主人公と従者でなるべく半分こにするんだ」
「勇者ベラだけが受ければいいわけじゃないんだ! ど、どうしよう……おともだち、避けられるかな」
「ランダムに決めてもいいし、ディジーが選んでもいいよ」
「じゃ、じゃあ……ウーくん、がんばって!」

0ラウンド目
【ロケットうさぱんち】
 勇者ベラ 防御 🎲2 失敗
 ウーくん 🎲6 クリティカル!

「防御ロールに-1点だから、勇者ベラにはうさぱんちが当たってしまったね。ウーくんは見事に跳ねて避けられたみたいだ」
「ウーくんすごい! えっと、ダメージを受けたから……生命点を1点減らすんだね」

勇者ベラ 生命点5⇒4点

「では、1ラウンド目を始めよう。反撃開始だ、がんばれ勇者ベラ!」
「うんっ、負けないぞー!」

1ラウンド目
 勇者ベラ 🎲4 成功
 ウーちゃん🎲3+1 成功 
 サーちゃん🎲5+1 成功 
 ギーちゃん🎲5+1 成功 
 ヘーちゃん🎲6⇒6⇒5+1 クリティカル2、成功1
 イーちゃん🎲6⇒4+1 クリティカル1、成功
 シーちゃん🎲6⇒2+1 クリティカル、失敗
 ウーくん🎲2+1 失敗

「く、クリティカルが凄いな……えぇと……10点分も成功しているね……」
「わーい! みんなありがとう!」
「勇者ベラとお友達たちのがんばりによって、殆ど被害なくゴーレムの暴走と止められたようだ。倒せたので、宝物表を振れるよ。+1の修正もついているね」
「たっからもの~!」

宝物表 🎲3+1=4 1d6×1d6のアクセサリー→金貨18枚の価値のお花とリボンの髪飾り

「出目4は、1d6×1d6のアクセサリーだね。2回ダイスを振って、出目同士を掛けるんだ」
「えっと……出目は6と3。6×3だから……18?」
「正解だ。金貨18枚の価値のあるアクセサリーだったようだね。これは……ゴーレムの主人から、お詫びに貰ったことにしようか。どんなものがいい?」
「んーっとね……お花の形の髪飾り! リボンもついたやつ!」
「ディジーはお花が好きだなぁ。いいとも、とびきり可愛いやつを差し上げよう」
「やったー!」」



🎁めでたしめでたし!



「さてさて……ゴーレムを倒してひと段落ついたあと、女の子にプレゼントを渡そう。贈りたい【プレゼント候補】か、または換金できる宝物を1つ選ぼうか。複数渡しても良いみたいだよ」
「じゃあ、まずは【綺麗な花束】! 似合いそうなお花をつんできたよ! そして、【ぬいぐるみノウサギさん】! ふかふかのかわいい子だよ。それと、アクセサリーは、【猫のブローチ】! さいごに、【小さな猫の置物】もあげるね!」
「『わー! こんなにいっぱい! ありがとなの!』と喜んでくれたようだね」
「良かったぁ~!」
「全員がプレゼントを渡し終えると、女の子が立ち上がる。『きょうは、ありがとなの! えっと、さぷ……さぷら……さぷ?』」
「さぷ?」
「女の子が口ごもってしまったので、女の子のお姉さんが続ける。『本日は妹の誕生日パーティにお越しいただきありがとうございます。ここで本日の主役・妹からサプライズがあります!』」
「さぷらいず?」
「女の子のお姉さんが言うには、今日プレゼントをくれた人全員に、女の子とその家族からお返しのプレゼントがあるらしいんだ。内容はくじで決まるけれどね」
「えーっ、わたしたちがおいわいする方なのに? いいの?」
「嗚呼、貰ってくれると女の子と家族も喜ぶだろう。これからも宜しくという事だね」
「じゃあ、えんりょなく。何かなぁ!」
「さて、表を見てみよう。贈ったものの中で一番高いランクのものから選ぶから……今回はランク2のものだね。1d3×5枚の価値の、綺麗なアクセサリーだ」
「1d3は……1~2が1、3~4が2、5~6が3だよね。えい! ……2×5で10!」
「どういうアクセサリーがいいかい? また髪飾りかな?」
「えっとね……ウサギ型のブローチ! 女の子にあげた【猫のブローチ】と似てるかんじのがいい!」
「それはいいね。じゃあ、綺麗に輝く白いウサギ型のブローチを、お返しに貰ったよ。全員分のお返しを用意するなんて太っ腹だと思ったけれど、周りを見ると、勇者ベラが貰ったような高価なお返しの人はあまりいなかったみたいだ。運が良かったんだろうね」
「こういうのは気持ちがだいじだけど、うれしいな」
「そうだね。それらは換金してもいいし、そのまま持っていてもいいよ。これで女の子の誕生日パーティーは終了だ。勇者ベラの冒険もめでたしめでたし! おめでとう!」
「わーい! 良かった、勇者ベラもおともだちも倒れずにすんで!」
「そうだね、最後の戦いの凄さにはパパもびっくりだ……見習いたいよ、ディジーの出目運を……」
「パパ、何か呻いてる時あったもんね」
「見てたのかい!?」
「うん。でも嬉しそうだったり、悲しそうだったり、面白そうだったから、わたしもやりたかったの。だから、教えてくれてありがとう!」
「そうか、見られていたか……楽しかったかい?」
「うん! また遊びたい!」
「そうかそうか。でも、今日はここまでにして。また今度一緒に遊ぼう。パパも楽しかったよ、ありがとうディジー」
「うん!」

・ω・



 さてさて、シナリオ「可愛いあの子に最高のプレゼントを」はめでたしで終わりました!

 ランク3のプレゼントはお渡し出来なかったので、そこはちょっと天狗ろむ的にはぐぬぬう!なんですが、父マスターGM、娘ディジベラがPLというやりとり、終始ほのぼのあったかい雰囲気の親子で出来たので、シナリオの優しさも相まってとても和みながら書けて満足です!皆様はいかがだったでしょうか?


 あと「ね、こ」っそり、とある方を登場させております。あまりにも「ね、こ」っそりなので、どうかにゃ、分かったかにゃ~?🐱


 ここまでは、回想編というか過去編、という扱いですので、現在のディジベラちゃんとマスターにも目を向けてみましょう。もう少しばかりお付き合いください。

 


・ω・


🎁エピローグ 可愛いあの子たちに最高のプレゼントを!



「ベラねーちゃ! マスター! こんにちは!」
「今日はお招きいただいてありがとう!」
「久々にゃ~! 元気だったかにゃ?」

 少し日が落ちかけてきた頃。〈天駆ける狗〉亭に、元気な少女たちの声が響いた。ラドリド大陸から離れたキャトルド出身であり、ラドリド大陸の南西端・冒険都市カラメールに拠点を置く冒険者、リナとりにゃ姉妹、寝子の3人だ。ディジベラは待ってました、とばかりに扉を開け放つ。 
「遠路はるばるようこそ、〈天駆ける狗〉亭へ! さぁ、入って入って!」
「お陰様で元気だよ。君たちも変わりないようで何よりだ」
 3人が宿の中へ入ると、わぁ、と歓声が上がった。宿の酒場スペースの壁や机は、リボンや花飾り、タペストリーなどの布細工で可愛らしく飾り付けがされている。
「さ、座って! すぐにご馳走を持ってくるからね。りにゃちゃんは、主役だからここね」
「りにゃ、しゅやくなの!」
 クッションが多く積まれた椅子に、りにゃを座らせる。リナと寝子もその近くの椅子へと腰かけた。
「今日の料理は私が腕によりをかけたから、是非味わってくれ」
「今日はベラさんが手伝っていたりはしないよね……?」
 以前、リナと寝子が初めて〈天駆ける狗〉亭を訪れた際、ディジベラの料理の腕がヤバそうである、と何となく察していたのだ。リナも「1人で火を使うな」と言われているから、あまり人の事は言えないかもしれないのだが。
「えぇ、手伝ってないわよ。料理は父さんがどうしても、って言うから」
「良かったにゃ……それだけが心配だったにゃ」
「え?」
「何でもないにゃ~!」
 3人は安心して、ディジベラが運んできた料理に口をつける。なめらかな大カブのポタージュや、グリーンランス(アスパラガス)のベーコン巻き、春のハーブのサラダ。初来訪の時に鍋にしたオストリッチは、今回は香草パン粉焼きとして出てきた。脂の少ないオストリッチの肉は、焼いてしまうと固くなりやすいらしいのだが、パン粉をつけて揚げ焼きしたことで、外はサクサク、中は柔らかく仕上がっている。パン粉に粉チーズを混ぜてあるのか、香ばしいチーズの風味もあって、いくつでも食べられそうだ。
「美味しー!」
「お代わりにゃー!」
「りにゃも、りにゃも!」
「あはは、まだまだあるけど、デザートもあるからね?」
「「「デザートください!」」」
 冷蔵ゴーレムで冷やされていたデザートが運ばれてくる。ディジベラがロング・ナリクへ行った際のお土産、ナリク特産品の桃酒を少しだけ使ってある、つやつやとした旬のレッドベリー(イチゴ)のタルトだ!
 ロウソクを立て火をつける。悪い霊たちが子どもの誕生日を狙ってやってくると信じられていたから、ロウソクの炎と共に、それを吹き飛ばすのだそうだ。りにゃは何とか、ふうっと吹き消して見せた。
「りにゃちゃん、お誕生日おめでとう!」
「おめでとう、りにゃちゃん」
「ありがとなの~!」
 りにゃはディジベラとマスターにお祝いしてもらってニコニコしている。そんな嬉しそうなりにゃを見て、リナと寝子も微笑みあった。
「さ、眠くなっちゃう前に渡しておくわね。プレゼントの時間よ!」
「やったなの~!」
 ディジベラから、丁寧にラッピングされたプレゼントを受け取る。押し花をあしらったメッセージカードも添えられていて、りにゃでも読めるように「おたんじょうびおめでとう! かわいがってあげてね」と書かれている。中身を早速開けてみると、魔猫を模したらしいぬいぐるみと猫の形をしたブローチが出てきた。ブローチはからくり都市チャマイで買ったものらしく、歯車などが使われている。
「尻尾がね、ほら、動くのよ。可愛いでしょう?」
「かわいいなの~! ありがとなの、ベラねーちゃ!」
「リナちゃんと寝子ちゃんにも、ブローチの色違い、お揃いのをどうぞ!」
「えっ、私たちにも? ありがとうベラさん!」
「嬉しいにゃ~」
「私からは……これだ。少しかさばってしまうかもしれないが」
 マスターからは、どうやら手書きの、小ぶりな本だった。表紙には愛らしいタッチで絵が描かれている。
「絵本ですか?」
「なになに……『可愛いあの子に最高のプレゼントを』にゃ?」
「私が好きだった絵本なんだけど、何だかりにゃちゃんとリナちゃん、寝子ちゃんみたいな子が出て来るの。それでね……」
 小さかった頃のディジベラが、その絵本の主人公になったつもりでやった冒険のお話を、殆ど覚えていたマスターが文章化し、ディジベラが絵を描いて、絵本にしたのだという。つまりは親子の合作という訳だ。
「私の文章は大したものではないんだが、ディジーの絵は可愛らしいだろう? とは言え、売れる程のものではないかもしれないが……この世に一つの絵本だ。どうか受け取ってくれたら嬉しい」
 表紙の絵……りにゃやリナ、寝子に似た女の子、そして、少し勇ましい出で立ちをしているディジベラに似た勇者。その4人がニコニコと笑っている、それを眺めて、りにゃは満面の笑みを浮かべた。
「りにゃと、ねーちゃたちの絵本なの! ありがとー!」




‐ω‐


 本日の主役たちが寝静まった後、片付けをしながら、ディジベラは父に話しかける。

「父さん。あの絵本のお話を思い出して、改めて思ったの。あの冒険に憧れて、私は冒険者を目指したくなった。一度冒険をして身に染みたけど、あの絵本みたいに優しくも簡単な事でもなかったわ。……でも、やっぱり私、冒険がしたい。いつか、リナちゃんたちの故郷にも行ってみたいわ。その為にも、私、もっと勉強したり、強くなるわね。父さんが心配しなくても済むように」
「……そうか」

 少し大人びた眼差しで、ディジベラは真っすぐ父を見上げる。
 その表情は、憧れに夢見がちな娘のものではなかった。
 世間の厳しさを学んだ上で、それでも、焦がれるような思い。それを否定してはならない、とダヴァランはゆっくりと頷く。
 無論、どんどん行ってこい、などとは言えようもない。大晦日のロング・ナリクでの一騒動で、ディジベラは危うく命すら落としかけたのだと聞いた。肝どころか、身体中の内臓が冷え切って、生きながらにしてアンデッドにでもなるところだったのだから。
 ――だが、しかし。
 愛娘が自分の手から離れていく時が近づいているのは寂しいけれど、その背を押してやりたい、ともダヴァランは思い始めている。
 自分だって、冒険が好きな気持ちは分かるのだから。

「明日から、少し稽古でもしようか」
「ほんと!?」
「戦闘の時の私は厳しいぞ? ついてこられるかな、勇者ディジー?」
「う、戦うのは苦手だけど、がんばるわ! でも、お手柔らかにお願いします……」
「はは、分かったよ」

 

 とは言え、まだ今ではない。
 教えられる事は教え、伝えるべきは伝えてからだ。
 ディジベラが父に一人前と認めてもらうまでは、もう少しかかりそうだ。


 こうして、〈天駆ける狗〉亭での賑やかで温かな一晩は、幕を下ろしたのであった。


・ω・



 と、言う訳で今度こそおしまい!です!

 シナリオ内でランク3のプレゼントを出来なかったので、エピローグでランク3になるよう(プレゼント+ラッピング+メッセージカードのコンボを)山盛りにしました(おとなげない)。なかなか魔法の宝物表が振れないんだなぁ~。


 本来は、りにゃちゃんのお誕生日を祝うシナリオなのですが、此方の都合で絵本の中のお話にさせて頂いたので、実際のお祝いパーティーは〈天駆ける狗〉亭で開かせて頂きました。ご足労頂く形になっちゃったのですが!


 実はリナちゃん&寝子ちゃん、そしてりにゃちゃんは、拙亭シナリオ『天駆ける狗のディナーは■ミの鍋』のリプレイにて、既に一度は遊びにきて頂いています!ありがたやー!


 

(そのリプレイの際に「ディジーって呼んでね」「ベラって呼んでいい?」というやりとりがあったので、リナちゃんとりにゃちゃんには「ベラさん」「ベラねーちゃ」と呼んで頂いています。オリジナル呼び名もうれし~!)


 マスターからの絵本は、りにゃちゃんのお誕生日プレゼントとして、このリプレイをあげます、みたいな感じになってるんですけど、果たして実際に喜んで頂けるかははなはだ疑問です…あとリナちゃんたちの喋り方とかニセモノでしたら申し訳なし……!


 と、とは言え、りにゃちゃんおめでとう!!!!!!!!! の気持ちは沢山込めたので、そこだけは受け取って頂けたら幸いです…はい…!


 そのお祝いに絡めて、ディジベラちゃんとマスターの心情もすこーしだけ変わった部分も描写に取り入れてみました。最初の冒険に何があったか、はこちらの拙リプレイをご覧ください。



 冒険者としてはまだ半人前なディジベラちゃんが、勇者ベラのように冒険に繰り出す日は来るのか……その辺りも含めて、応援頂ければ嬉しいです。


 最後にひとこと!


 りにゃちゃん、はっぴーばーすでー!!!!!!

 より良い冒険が、訪れますように!


 ちっちゃい子が頑張る様がだいすき、天狗ろむでした!

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